日韓鉄鋼バトル、電炉業界でも形勢が逆転 薄日が差す日本、苦境にあえぐ韓国

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ただ、苦境の真っ只中にある韓国に比して、日本の電炉メーカーには薄日が差してきた。国土強靭化計画や東京オリンピックに向けたビルの建て替え需要を追い風に、建築用の鋼材需要がようやく底打ち。堅調な内需を背景に、採算の悪い輸出の比率が縮小しているからだ。

国内のスクラップ市況は転換点に差し掛かっている

また、高値に悩まされてきた原料の鉄スクラップ価格も「転換点に来ていると感じている」(東京製鉄の今村清志・常務取締役)。

これまで鉄スクラップ価格は、国内の鋼材需要とは無関係に乱高下してきた。1990年代には1トン当たり2万円を超えることがなかったが、2000年代に入ると状況が一変。韓国や中国向けの輸出が増えたことで、2004年に3万円を突破して以降、高値圏で推移してきた。

しかし、日本や米国からスクラップを輸入する韓国で東国製鋼などの電炉メーカーが生産を縮小したのに加え、トルコなど新興国の電炉メーカーも、自社で生産するより中国産鋼材の加工したほうが安上がりなことから、鉄スクラップの購入を控えだした。

こうした需要減を見越して、日本国内の鉄スクラップ価格は急速に下落している。日本鉄リサイクル協会のまとめによれば、関東・中部・関西3地区の鉄スクラップ価格は2014年4月に1トン当たり3.1万~3.2万円程度で推移していたが、10月以降は2.8万円程度まで値下がりした。

高炉メーカーではすでに逆転

日本には40社近い電炉メーカーが乱立するが、韓国は10社程度に集約されている。かつて日本の電炉メーカーは、韓国の安い電気代や集中生産による高収益体質をうらやんできた。ただ、堅調な国内需要や原料安を背景に、日本企業の業績は回復傾向にある。一方で、輸出や内需の停滞に苦しむ韓国企業の業績は逆に悪化している。

鉄鉱石と石炭を原料に生産する高炉メーカーの場合、2013年度の純利益実績ではすでに、ポスコの1兆3550億ウォン(約1477億円)に対して新日鉄住金が2427億円と、2008年度以来5期ぶりの逆転を遂げている。ライバル関係にある日韓の鉄鋼バトルは高炉業界だけでなく、電炉業界でも収益構造の逆転が起きようとしている。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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