(第46回)大変化が起きた時には試行錯誤が必要になる

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 シリコンバレーのベンチャー企業がIT産業の発展に重要な役割を果たしたことは、よく知られている。しかし、この過程において、政府が特定のベンチャー企業を支援して方向付けを行ったわけではない。さまざまな企業が誕生し、激しい競争に生き残ったものが、結果として新しい産業を確立したのだ。

検索サービスはその典型例だ。最初はさまざまの検索サイトが現れたが、その中からグーグルが生き残ったのである(もっともグーグルは、順位付けを行った点で最初から優れていたことは事実だ)。

政府の成長戦略は有害であることが多い

政府や支配的企業による特定の方向付けがあると、社会全体がそれに縛られることになりかねない。

たとえばインターネットが普及し始めたとき、NTTはISDN(総合デジタル通信網)で対応しようとした。そして大規模な投資を行った。このため、従来の電話回線を用いるDSL(デジタル加入者線)の導入が遅れたのである。

もちろん、政府による方向付けや成長戦略が意味を持ち、大企業体制が有利な場合もある。しかし、それは進むべき方向が明らかであり、その方向に向けての大規模投資が必要な場合だ。核兵器の開発、宇宙開発などはそうした事例である。

また、基本が確立された技術については、生産工程の効率化が重要な意味を持つ。かつての半導体産業や現在の自動車産業がその例だ。鉄鋼業を始めとする装置産業もそうだ。

そして先行者の後から発展する社会は、有利な立場に立つ。イギリスよりも遅れて産業化に着手したドイツや日本は、試行錯誤を経ずに効率的な生産体系を確立しえた。日本は高度成長期においてもなお、後発工業国の利益を享受した。

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