ハウステンボスが牽引、HISの華麗なる変身 円安進行もハネのけて3割増益を達成

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ハウステンボスの経営を引き継いだ、H.I.S.の澤田会長(撮影:今井康一)

国内需要を取り込むための施策はハウステンボスだけではない。

パッケージツアーや宿泊予約専門サイト「スマ宿」など、国内旅行商品のラインナップを拡充。従来のH.I.S.では考えられない事業展開だったが、国内バスツアーも急激な勢いで拡大中だ。

むろん、インバウンド需要の囲い込みにも余念がない。11月4日には、全日本空輸(ANA)系のツアー会社と合弁会社「HAnavi(ハナビ)」を設立。ANAの国内線航空券とH.I.S.のホテル宿泊を組み合わせた商品を、来年4月からH.I.S.の海外支店などで販売する予定だ。

こうした国内旅行事業の強化もあり、H.I.S.は今2015年10月期も売上高で前期比10.8%増の5797億円、営業利益で同22%増の194億円を見込んでいる。

ラグーナ蒲郡が試金石

アジア・アトランティック・エアラインズの黒字化が課題の1つ

ただし、不安要素がないわけでもない。その1つが、テーマパーク再生の第2弾として8月に事業承継した、「ラグーナ蒲郡」(愛知県蒲郡市)だ。ハウステンボスのノウハウを投入して立て直しを進めているが、前例に比べると全国的な知名度が低く、先行きはまだ不透明である。

タイを拠点に展開するチャーター専門の航空会社、アジア・アトランティック・エアラインズも、グループの足を引っ張る。前期は売上高約32億円に対して、約18億円の営業赤字。エアアジアXなど、東南アジアを地盤とする中距離LCC(格安航空会社)との競争が激化しており、黒字化には課題山積だ。

こうした不安要素をはねのけて、今期も高成長を維持できるか。為替相場が数年前とは様変わりの円安水準で推移する中、国内事業のさらなる飛躍が不可欠だ。

「週刊東洋経済」2014年12月20日号<15日発売>「核心リポート03」を転載)

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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