【産業天気図・業種別業績予想集計】「会社四季報」2011年1集新春号
「会社四季報」2011年1集・新春号(10年12月発売)の最新データを基にした独自集計によれば、今11年3月期の予想営業利益(金融除く「全産業」ベース)は、前期比47.9%増となる見通し。前10年3月期の実績である4.7%増から大幅に改善しているだけでなく、前10年4集・秋号の予想からも3.5ポイント上昇している。円高という懸念要素がある中でも、日本の産業界は着実に業績回復の足取りを進めている。
業種別にみると銀行・保険を除く31業種中、前期比で営業増益・黒字化となるのは25業種。伸び率が大きいのは鉄鋼(435.2%増)、石油・石炭製品(137.4%増)、電気機器(128.9%増)、機械(126.2%増)など。黒字化するのは海運、空運、その他金融の3業種だ。また、9月の前号予想から予想営業利益の合計額が上方修正された産業は20業種に上る。
一方、前期比で営業減益となるのは、証券(63.3%減)、その他製品(14.8%減)、パルプ・紙(7.1%減)、医薬品(6.5%減)、鉱業(3%減)、食料品(1.7%減)の6業種。前期の11業種から大幅に減少している。
四季報記者の予想では来12年3月期は、石油・石炭を除く全産業が増益に転じる見通し。全産業が金融危機のショックから脱出するとみられる。ただ一方で、景気の底からの反動増の勢いも一巡しそうだ。
来期の予想営業利益(金融除く「全産業」ベース)は、今期比10.2%増と、今期予想に比べて37ポイント減が見込まれている。業種別にみると、証券の157.7%増が伸び率トップで、以下にその他製品(25.9%増)、鉄鋼(20.6%増)、金属製品(17.1%増)が「続く。多くの業種で増益幅が急速に縮まることになる。また、製造業が来期も12.9%増(今期71.4%増予想)と2ケタ成長をかろうじて維持するのに対し、非製造業は6.7%増(今期25.1%増)に後退する。
金融危機後、上場各社は大幅な資産・人員リストラなどを通して収益力の改善を図った。来期はその改革効果がいよいよ剥落する一方で、外需産業では円高、内需産業では消費不況という厳しい環境に直面することになる。長い停滞の始まりか、新しい成長の地平が見えるのか--日本の産業界の底力が問われるのはこれからだ。
■次ページに業種別営業利益・純利益予想の集計表を掲載