中国の歴史でまず思い浮かぶのは、2000年にわたる代々の王朝と皇帝であろう。漢文や唐物など、中国を表すおなじみの「漢」「唐」という言葉は王朝の名前であり、中国史上の著名な英雄は秦の始皇帝や三国志の曹操・劉備はじめ、その多くは皇帝となった人物たちにほかならない。
西方でもたとえばローマの歴史は、カエサル、アウグストゥス、ネロ、五賢帝、コンスタンティヌス、テオドシウスなどは皇帝の事蹟ストーリーで描くことができる。中国の歴史もそれと同じ。王朝・皇帝の系譜をたどれば、大づかみな筋道がわかる。そもそも当時の史書も、そのようにでき上がった。代表的な正史あるいは二十四史とは、皇帝をトップとする王朝政権の履歴書である。皇帝の君臨・王朝の統治こそ、中国の歴史そのものに等しかった。
歴史をつづるデータからそうなっているわけで、現代でも使う「唐代」「漢の武帝」とかいう用語・呼称も、そこに由来している。こうした観念は、中国の土地・人々ばかりでなく、われわれ異邦人の頭脳・意識にまでしみ付いたものだといってもよい。
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