国際秩序が大きく変化しようとしている。東西冷戦の終結とソ連崩壊後に進んできたグローバル化に対して、大きな反動が起きている。国家の自己主張が強まり、自国の国益を正面に掲げる帝国主義的傾向が強まっている。
しかし、19世紀末から20世紀の古典的帝国主義のように、植民地を求めることもなければ、帝国主義国間の全面戦争が起きることもない。それゆえ、現在進行中の状況を「新帝国主義」と呼んでおく。米国大統領選挙で「米国第一」を唱えたドナルド・トランプの勝利や英国のEU(欧州連合)からの離脱、欧州で影響力を拡大しつつある極右政党や排外主義者の動きも、新帝国主義現象の反映だ。ここでカギを握るのが民族と国家だ。この点について、世界史的視野で考察してみたい。
人間は群れをつくる動物だ。人間がいれば必ず社会ができる。しかし、社会があれば必ず国家があるわけではない。人類史は狩猟・採集時代、農耕時代、産業時代と発展した。狩猟・採集時代には、国家を必要とするほど社会の規模が大きくなかったため、人間の社会はあったが、国家はなかった。農耕時代には古代メソポタミアやエジプト、中国の秦のような巨大帝国は存在したが、自給自足の農村社会が国家と無関係に存在していた場合もある。
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