日本のナショナリズムを論じるとき、戦前も現在も無視できないのが「右翼」の存在である。
そもそも右翼とは何だろうか。保守と重なるところもある。が、同義ではあるまい。保守は現状を保ち守る。現状に不満を持つにしても、改革については漸進主義を採る。でも純粋な右翼はもっとラディカルである。究極的には大胆な革命を求める。その意味では左翼と同じだ。ただし左翼はそこで国際的に通用する理屈を考える。
しかし右翼は日本なら日本だけに通用する理屈や心情に立脚して「大和魂」といった特殊なものに価値を見いだす。では、日本の近代において右翼を特徴づけてきた特殊な考え方とは何か。主たるものとして次の五つを挙げたい。
①儒学的尊皇主義
②国学的日本主義
③アジア主義
④農本主義
⑤国民社会主義
①の儒学的尊皇主義は、水戸黄門こと徳川光圀に始まる水戸学の思想を一つの本山とし、その流れに吉田松陰らがいる。儒学は孔子の始めた古代中国の思想。皇帝は絶対の正義を具現せねばならず、皇帝に仕える臣民は皇帝に絶対の忠義を尽くさねばならぬと教える。もしも皇帝が不正に流れて正義を代表できなくなり、臣民もそれを補正できなくなったら、国家は滅び、王朝が交替する。
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