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黒田日銀「異次元の金融緩和」の本当の効果 物価下落に逆戻りでいよいよ正念場の金融政策

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東短リサーチ社長 加藤 出
かとう・いずる●1988年横浜国立大学経済学部卒業、東京短資入社。『日銀は死んだのか?』『バーナンキのFRB』など著書多数。2013年から現職。(撮影:梅谷秀司)

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今の日本銀行は非常に厳しい状況に立たされています。物価上昇率2%を2年程度で達成するという目標を掲げ、黒田東彦総裁が「量的・質的金融緩和」と名付けた異次元の金融緩和を始めたのが2013年4月。当初こそ物価上昇率は高まりましたが、その後に息切れし、足元でCPI(消費者物価指数、生鮮食品除く)は前年同月比でマイナス圏に逆戻りしました。

[図表1]

早期実現の約束が追加緩和期待を招く

14年夏以降の物価上昇率低下は原油相場下落の影響がかなり大きいといえます。ただ、日銀が「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」として毎月公表している、エネルギー価格の影響を除いたCPIを見ても、下降トレンドです。

異次元緩和の開始前、日銀が供給するおカネ(マネタリーベース)は約130兆円でした。13年4月以降、大量の国債買い入れによる資金供給を行った結果、現在では3倍以上に膨らみ400兆円を突破しています(図表1)。FRB(米国連邦準備制度理事会)の資産規模がGDP(国内総生産)比で25%程度なのに対し、日銀のそれは約9割。海外の中央銀行に比べて、異次元緩和の規模がいかに大きいのかがわかります。それでも物価は思うように上がってはいないのです。

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