第一線のエコノミストがズバリ解説
景気の現状はいい? 悪い?

小峰隆夫 法政大学大学院教授
こみね・たかお●1947年生まれ。69年経済企画庁(現内閣府)入庁。調査局長など経て、2003年から法政大学に移る。現在は同大大学院政策創造研究科教授。(撮影:梅谷秀司)

景気を読む最善の指標は、GDP(国内総生産)です。GDP統計は正式には国民経済計算といいます。日本経済がどう動いているか(=景気)だけでなく、その規模や構造を整合的につかむことができる。今回はGDP統計を通じて、日本経済の現状や課題について考えてみましょう。
GDPには三面等価の原則があります。生産(産業構造)、所得(分配構造)、支出(需要構造)のいずれから見ても、GDPは同額になるという原則です(図表2)。
これは、考えてみると当たり前のことです。たとえば象が東に向かって時速10㌔㍍で歩いている。これを上から見ても、横から見ても、前から見ても、象が東に向かって歩いていることは変わらない。日本経済も一つしかありません。それを生産・所得・支出という違った角度から見ているということです。
これら三つは相互に関連します。企業の生産が増えたので、雇用者の賃金が増える。賃金が増えたから消費が増える。企業は収益が増えて、投資に回そうとするかもしれません。こうした循環が続くと、景気が自律的に回復した、と評価できるようになります。
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