日本銀行が2013年春から始めた異次元金融緩和。経済学はその理論的支柱だが、わかりにくいのは本文で説明した複数の学派の考え方がごちゃ混ぜになっているからだ。
まず最も単純な異次元緩和のロジックは前記事のフリードマン(→関連記事へ)の部分で出てきた貨幣数量説。単に日銀が貨幣供給量を増やせばインフレが起きるというものだが、ここまで単純に考える経済学者は少数派だ。実際には貨幣量が増えると利子率が低下し、それが設備投資拡大を通じて景気、賃金、物価の上昇につながる経路が想定されている。貨幣量がまずは利子率に影響を与える点ではケインズ的だ。
だが現在のようなゼロ金利下ではどうなるか。貨幣量を増やしてもゼロ未満に金利は下がらないから景気や物価に影響を与えることはできない。またそもそもゼロ金利になれば、日銀がいくら頑張っても信用創造によって市中に出回るマネーストックを増やすことは難しくなる。
そこで活用されたのが、本文でも再三出てきた「期待」という概念だ。有名なのは1998年のポール・クルーグマンの論文。彼は「もし中央銀行が可能なかぎりの手を使ってインフレを実現すると信用できる形で約束できて、さらにインフレが起きてもそれを歓迎すると信用できる形で約束すれば(中略)インフレ期待を増大させることができる」と論じた。
苦し紛れの「期待」任せ
もしインフレ期待が増大するとどうなるか。設備投資に影響を与えるのは実質利子率と考えられているが、それは名目利子率から期待インフレ率を引いたものだ。名目利子率がゼロ近辺にあっても、期待インフレ率の増大で実質利子率は下げることができる。そうすれば再び設備投資拡大→景気、賃金、物価の上昇という経路を取り戻すことが可能になる。
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