本当にチャンスが来た! 地獄の修業を支えた一節
『道をひらく』を初めて読んだのは15歳のとき。僕は札幌のホテルで料理人の修業を始めていた。ある休日、書店に行くと『道をひらく』というタイトルと当時の赤い装丁が目に留まった。松下幸之助とはどんな人なのか知る由はなかったが、タイトルに引かれた。
というのも、僕は北海道北西部の増毛町という小さな町の生まれで、家は貧乏だった。高校にも行けなかったので、道は閉ざされていると思っていた。料理人になる道も当初から大志があったわけではなく、食うに困らない仕事かなと思っただけ。だから「道をひらく」という言葉は、不思議な響きに聞こえたんだ。
その本には、僕が感じた修業のつらさとか、何で自分だけ不幸なんだという思いが、的確な言葉になっていた。「俺だけじゃない。みんな一緒なんだ」と心が楽になった。そのうえで、日々精進して働く意義を説いていて、これぞ自分に向けた本だと思った。それからつねに枕元に置き、寝る前に読み返し、一生懸命働くエネルギーをもらった。
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