当時58歳。急成長企業の社長として本誌に初登場した松下幸之助。軽妙かつ脂の乗った問答を抜粋して再掲する。(旧仮名遣いなど、原文ママ)
苦心などしない
本社 あなたが松下電器をこゝまで育てられた苦心談とか成功談をおうかゞいしたいのですが…。
松下 苦心談といわれてもあまり苦心したという感じがないのです。
本社 苦心するのは当り前ということですか。
松下 いや苦心というものはあり得ないと思う。そういうと生意気だけれども、野球の選手を見てもわかりますよ。彼らは汗をかいてやつておるけれども実は歓喜にひたつてやつておるので、苦心なんかないはずです。それをたゞ便宜上苦心という言葉をつけるだけでほんとの苦心というものはあり得ない。
ですから苦心談を話せといわれても、よろこびをもつて仕事をしている以上に何もないから苦心談が出ないわけです。
本社 それは面白いですな。ところであなたが事業家として起つということを決心されたのはいつ頃ですか。
松下 僕が事業家として起とうと思つたのは…さあ問題や、商売をしようと思つたのと、事業家として起とうと思つたのと一寸意味が違う。商売をやろうと思つた動機はあるのですが…。
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