EUの経済危機は始まったばかりだ--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授
2010年11月末、EUとIMF(国際通貨基金)が、アイルランドの銀行を救済するために最大850億ユーロを拠出すると約束した。これにより、ヨーロッパの債務危機は終結に向かうのだろうか。
残念ながら、その答えは否だ。おそらく危機はまだその中間点に達しただけである。持続的な高成長を実現できれば債務問題を解決できるだろうが、そうした楽観的なシナリオはありえない。最終的には、1980年代のラテンアメリカの債務危機と同じように、債務償却の波が押し寄せる可能性が高い。
今後は、債務危機に直面する国に対し救済策が講じられることになるはずだ。救済リストの最上位にある国は、ポルトガルである。
同国は、過去10年間の平均成長率が1%を下回っている。労働市場はヨーロッパで最も硬直的であり、多額の公的債務と対外債務を抱えている。ポルトガルは、自国の状況はギリシャほど深刻ではないと主張しているが、その債務水準は極めて解決困難なレベルである。今後数年にわたり、同国は緊縮財政の中でリセッション、もしくは低成長に陥ることが予想される。早晩救済を求める日が訪れるだろう。
スペインの状況はさらに深刻だ。政府には債務返済能力があるといわれているが、地方銀行の債務の大半は返済不能だ。スペインの大きな問題は、アイルランド同様に、政府が民間と地方自治体の債務を引き受けるかどうかである。過去の歴史からして、同国は債務引き受けを選ぶだろう。経済の主要部門が崩壊の瀬戸際にあるとき、政府が傍観の立場をとるのは極めて難しい。