EUの経済危機は始まったばかりだ--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授


ラテンアメリカと同じ道を歩んでいる

しかし、ポルトガルとスペインの救済は、欧州経済危機の最終段階ではない。あくまで危機の序章だ。

ユーロ圏において債務危機に直面した国は、民間債務と公的債務の大幅な整理が不可欠となるだろう。EUとIMFによる救済は問題解決の先送りにすぎない。どんな緩やかな条件の融資であっても、最終的には返済しなければならないのだ。

いわゆるPIGS(ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペイン)は緊縮財政を取る前から成長鈍化に直面しており、80年代にラテンアメリカが経験したような“失われた10年”を経験するはずだ。

ラテンアメリカの再生とダイナミックな成長は、ブレイディ米財務長官が発案した協調的な債務償却計画“ブレイディ・プラン”が実施された、87年以降に実現したものである。これと同じような債務償却を実施することが、ヨーロッパで最も実現性のあるシナリオだ。

債務削減に前向きに取り組もうとしているユーロ圏唯一の指導者はメルケル独首相である。ドイツは、「ヨーロッパには国家の破綻を処理する明確な仕組みが必要だ」と指摘したことで批判を浴びている。多くの専門家や評論家は、ドイツの不用意な声明がなければ、アイルランドはそこまで大きな痛手は受けなかったと非難している。

これは根拠のない批判である。巨額の民間債務、住宅価格の下落、国民所得の10倍以上の対外債務を抱えるアイルランドにとって、事態を打開する容易な方法などない。芝居がかった裏交渉で問題を解決しようとしても、債務問題をさらに悪化させるだけだ。

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