そうはいっても、国政だけではなく、あらゆる選挙をNHKではくまなく報道するので、どうしても選挙の仕事をやらなくてはいけないときもあります。そういうときは、「どうか、中継がこない泡沫候補の担当になりますように~」と祈っていたものです。
選挙番組なんてフォーマットも決まっていて、クリエーティビティ、ゼロ。誰がやっても同じ仕事なんてやっても面白くないと、その頃は思っていたのです。
ところがそんな偏見をぶち壊してくれたのが、池上彰さんの選挙特番です。テレビ東京で2010年から選挙番組のキャスターを務めている池上さんは何とも楽しそう。NHKでやりたかったことを、全部、実現している感じが伝わってきます。
池上さんは社会部出身なので、NHKにいれば選挙番組のキャスターを務めるということはなかったはずです。NHKでは武田真一さんのような選挙に強いアナウンサーと政治部の記者という組み合わせで番組を進めることが決まっているからです。
テレビ東京は、おカネがないからか、他局のように満遍なく中継スタッフを送り込んではいません。そのためバンザイ中継もほとんどやりません。速報性ではどうしても負けてしまうのです。
しかし、池上さんとテレビ東京はそこを逆手にとり、企画とオリジナリティで勝負することにしたのです。こうして “池上無双(むそう)”が誕生しました。
・相手が首相だろうと、誰であろうと、視聴者目線で聞きたいことは聞く(相手が怒ったり、笑ったり、感情的になったりしたら、むしろ成功と考える)
→ 今回では、安倍首相がムキになって反論した瞬間、谷垣禎一さんがニコっと笑った瞬間、池上さんは勝ち誇っていたように見えました。
・取材したい候補者がいたら、いつでもどこでも直撃する
→ コンビニで買い物中の小泉進次郎さんに、池上さん自ら取材交渉。
・タブーだと思われていることにあえて焦点を当てる
→ 公明党本部直撃、平沢勝栄事務所の政治資金収支報告書を自らチェック。
・他局が取材しないようなマイナー選挙区を取り上げて、問題点を浮き彫りにする
→ 自民党の候補者も民主党の候補者もいない東京12区を取材。
・テロップには工夫する
・スタジオのメインセットは、わかりやすいものをひとつ用意する
その中で特に話題となっている「テロップ」について、もう少し掘り下げます。
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