来春の電力小売り全面自由化を前に、高圧一括受電ビジネスを展開する業者の売り込みが活発化している。
矢野経済研究所によれば、東日本大震災後の電気料金値上がりへの対策として急激に増え、現在では新築物件で標準的に装備されるようになってきたという。業者は電力会社系、マンション管理会社系が中心で、既築物件も含めると2014年度で490億円、30年度には2000億円規模まで市場が膨らむと分析している。
電気代半額のカラクリ
「高圧一括受電を導入すれば共用部分の電気代を半減できます。お得ですよ」 仕組みはこうだ。通常、専有部分、共用部分は個別に各電力会社と低圧契約をしている。それをマンション1棟分での電気一括購入、高圧契約に切り替えれば単価を引き下げられる、というのだ。
大ざっぱに計算すると、現在、通常の家庭向け電気料金(低圧契約)は1キロワット時当たり約28円。一方、高圧契約の単価を業務用電力料金から推計すると20円程度となる。つまり、契約を変更するだけで電気代が約3割お得になる。
3割しか安くならないのに、なぜ電気代を半額と謳えるのか。たとえば、総戸数150戸のマンションで考えてみよう。計算を簡便にするために電気代を1戸当たり月平均8000円、共用部分は年間260万円と仮定すると、マンション1棟丸ごとの電気代は年間1700万円だ。これを高圧契約に変えることで1192万円、従来と比べ約510万円を節約できる(図1の左側)。
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ところが、業者が半額にするのは共用部分のみ。マンション全体で見ると130万円しか圧縮できていない(図1の右側)。
一括受電を行うには、それまで東京電力など電力会社がマンション敷地内に設置していた変圧器を、自家用の受変電設備に替える必要がある。また、検針などの手間を省くため、各戸に設置されている電力メーターをスマートメーターなどに付け替えることも考えなければならない。こうした初期費用を保守的に見積もると、2500万円程度の投資が必要となる。
一括受電業者はこれらの設備を提供する代わりに、年間510万円-130万円=380万円を受け取るというわけだ。
このサービスのミソは10~15年という長期契約にある。途中解約を行うと莫大な違約金が発生し、さらに受変電設備やスマートメーターも撤収される。仮に地域電力会社の電気代が10年間変わらないとすれば、10年間に一括受電業者が受け取る差額は3800万円。このうち初期投資に2500万円かかったとしても、10年間に粗利で1300万円以上の儲けを得ることになる。
自由化の恩恵はなし
電力小売り全面自由化で、電力会社から供給される電気代そのものが下がる可能性が大きい。だが、一括受電の割引率は当初の価格で設定されているので、マンション住民は電気代値下げの恩恵を受けられない。個々の住戸は個別に電力小売事業者と契約できず、自助努力による電気代節約は困難となる。
導入に当たっては、マンションの全住戸の同意を得なければならないうえ、3~5年に1度、メンテナンスのために停電が発生する。業者によっては専有部分と共用部分の両方を値下げするプランも用意しているが、全体で見た割引率はそれほど変わらない。そうした障害を乗り越えてまで、電力小売り全面自由化前に導入すべきかどうか。一度じっくり考えてみる必要がある。






















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