東京都墨田区に立つ東京スカイツリー。その近くにある10階建てのマンションが2017年に生まれ変わる。
「ビレッタ朝日」(写真)の建て替えは、前を走る水戸街道が都の緊急輸送道路の指定を受けたことがきっかけだった。指定道路に面する建物は、耐震診断が義務化される。結果は「倒壊の危険性が高い」。約1年半の議論の末、所有者全員の合意で建て替えを決議した。
表1のように、建て替え後は周辺5戸との一体開発で、延べ床面積がほぼ倍になる。増えた床はデベロッパーを通じて売却されるため、その分、住民負担は軽い。それでも、1戸当たり平均で約1000万円の“持ち出し”になる。建て替え期間中、約2年間の仮住まいも負担だ。
拡大する
建て替え予備軍は急増
同マンションは今春から解体工事が始まったが、直前に賃借での入居者が立ち退きに応じず、訴訟を起こす場面もあった。管理組合理事長の八木秀夫さんは「最後は経済条件が合うかどうか。住民の合意を実現できてホッとしている」と語る。
建て替え事業者となった旭化成不動産レジデンスの大木祐悟主任研究員は、「これまで当社で建て替えたマンションの平均築年数は44年。マンション建設は1970年を境に年5万~8万戸と急に増えており、今後建て替えニーズが顕在化する」と指摘する。
昨春、マンション再生の専門部を立ち上げた長谷工コーポレーション。同社では建て替えや長寿命化の相談が昨年比倍のペースで増えている。「社会的ニーズがあるのは間違いない。今後年5件程度の建て替えを手掛けたい」(村上誠・マンション再生事業部統括部長)。
ただ、これまで建て替えられたマンションは全国で211件(図1)。81年6月以前の旧耐震基準で建設されたマンションの現存戸数が約106万戸であることを考えると、この件数は少ない。最大のハードルは経済条件だ。取り壊しだけでも坪当たり5万~10万円の費用がかかる。
拡大する
建設当時よりも斜線制限などの建築条件が厳しいため、建て替え後は従来より狭くなってしまう物件も多い。ビレッタ朝日のように広さを確保できるのは一部の物件に限られる。しかも、床を広げて外部に売却できる立地であることが条件だ。「1戸当たりの負担が1000万円以内なら恵まれた物件」(村上氏)という。
建て替えには区分所有者の5分の4以上の賛成が必要になる(表2)。建て替えに詳しいアークブレインの田村誠邦代表は「住民合意が取れずに建て替えが進まないケースをいくつも見てきた。一度建て替えを議論して膠着状態になると、修繕も進まなくなる」と指摘する。
拡大する
建て替え要件の緩和も今後の検討課題だろう。耐震性不足と認定されれば容積率緩和の特例が受けられるが、ほかの建築規制はそのままのため、ほとんど利用されていない。“建て替え予備軍”が急増する反面、「9割以上は建て替えできないのではないか」(田村氏)。マンションのゴースト化が問題になる日も近い。






















無料会員登録はこちら
ログインはこちら