杭問題の発端となった横浜の傾きマンションでは、販売元の三井不動産レジデンシャルが早期に手厚い補償を表明したが、これは異例の対応といえる。
潜在的には住民と企業の交渉が難航しているケースが多いのではないか。裁判にまで至っている事例を記者が追っていくと、欠陥マンション問題の根深さが見えてきた。
ケース(1)デベは「責任期間外」で施工者は「問題ない」と
駅や小学校、スーパーは徒歩10分圏内。東京23区内で、大手町までは電車で30分。築22年、多少欠陥があるとはいえ2LDKが月の賃料6万円ならお得な物件だな──。事前に賃貸住宅情報サイトを閲覧していたときはそう思ったが、現場を見て軽い気分は吹き飛んだ。
非常階段を使って上層階から降りながら、住民に各階の不具合を見せてもらう。ところがこの鉄骨の非常階段からして問題が生じていた。屋外にある階段をマンションに固定するボルトが複数落下しているのだ。
直接のきっかけは東日本大震災だが、原因はボルトの埋め込みが不十分だったことや施工時の「台直し」だったという。ボルトを埋め込む穴の場所がずれた際、ボルトを火であぶって曲げてねじ込むのが台直しだ。これを行うとボルトの強度が落ちてしまう。
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