ピケティ現象があらためて示した事実。それは「現実に使える知」としての最新経済学の力だ。ここでは誰にも身近な事例を基に、複雑なグラフや数式抜きで、新しい経済学のエッセンスを紹介しよう。
もはや「机上の空論」ではない
経済学は、「机上の空論」であるといわれてきた。
物理学と異なり、経済学では実験ができない。そのため理論の正しさを検証できず、百家争鳴の状態が続いてきた。
しかし、最近の実証重視の経済学は、そうした限界を克服し、現実妥当性を高めることに成功しつつある。一つの契機は2002年、感情に左右されがちな経済心理を研究する行動経済学の開拓者ダニエル・カーネマン、経済理論の現実妥当性を検証する実験経済学の開拓者バーノン・スミスにノーベル経済学賞が授与されたことだ。
実験経済学の基本原理は、無作為比較対照と呼ばれる考え方だ。
これは医薬品の評価では当たり前に用いられている、因果性を同定する最強の方法として知られる。
実験参加者をランダムに、トリートメントグループ(医薬品を服用するなどの介入を受ける)とコントロールグループ(そうした介入を受けない)に分け、個々人のバイアスに汚されていない介入効果を測る。
経済学におけるこうした実験的手法への関心の高まりは、公共事業の甘い見積りなど、結果ありきのお手盛りが社会的に批判を浴びたことと無縁ではない。正しい手法で正しい経済効果を測定するニーズは非常に大きくなっている。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら