あなたがベンチャー企業の経営者だったとしよう。事業マネジャーという設定でもよい。今、数人のチームを率いて一つの事業を成長させる責任を負っている。部下たちは能力の高い人材ばかりだが、あなたほどのやる気はなさそうだ。
さて、いかに部下の働く意欲を喚起するか。
長い間、経済学者はこの問題について素っ気ない解答しか持ち合わせていなかった。「カネを積め」である。人はおカネというインセンティブに反応する“動物”だ。高額な報酬を提示すれば、従業員の仕事は目に見えて改善すると考えてきた。
しかし、行動経済学、実験経済学を取り入れた最近の経済学によると、答えはノーだ。人はおカネだけでは働かないことが、研究者によって明らかにされてきている。
行動経済学者である現デューク大学教授のダン・アリエリー氏と、カーネギーメロン大学教授のジョージ・ローウェンスタイン氏らは2009年、従業員への「報酬の大きさ」と「成績」との関係を検証した一連の研究を学術誌に発表した。
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