不安定化する市場、アメリカ金融緩和の功罪


日本もそのあおりをくらった。円高をめぐる狂躁が収束する一方、日本の長期金利も0・86%から1・2%へ上昇した。もともと日米の長期金利は連動する傾向がある。ところが、欧州のソブリン危機で、米国債は安全資産として買われ、金利が下がった時にも、日本の長期金利はなかなか下がらない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジストによれば「金利低下局面で安心して国債を積み上げていた日本の機関投資家が損切りに走った需給の要因が大きい」という。

市場が不安定化している背景の一つには、バーナンキ議長の責任ではない誤算がある。欧州のソブリン問題の再燃だ。もともとギリシャ危機以来、ドミノ倒しの不安を抱えているとはいえ、独メルケル首相の「13年以降、民間債権者にも負担が求められる」との発言がなければ、これほど市場心理は振れなかっただろう。一方で、新興国の相次ぐ金融引き締めには、米国とそれに連れ立っての日本の金融緩和がバブルを助長したのも一役買っている。

世界が一枚岩となって金融危機に対峙したリーマンショック後とは様変わり、各国の経済状況は大きく異なる。「金融引き締めに動く新興国と金融の超緩和状態へ進む日米と、かつて金融政策がこんなに乖離したことはない。これは金融市場のボラティリティ(変動率)を高めた」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は指摘する。グローバルな資金移動の中で、当局も金融政策の波及効果が読めなくなっている。


(大崎明子 =週刊東洋経済2010年12月11日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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