キリンも見込んだビール会社が次なる一手 長野のビールメーカーがネットで新展開

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業務提携で9月会見を行ったヤッホーの井手社長(左)とキリンの磯崎社長

キリンビールの磯崎功典社長は9月の会見で「大手メーカーが作るビールは同じような味でつまらないと思う人が増えている。クラフトビールで味覚の画一化から脱却し、市場の流れを大きく変えたい」と意気込んでいた。同社では15年に事業会社を新設し、クラフトビール市場へ本格参入することも表明している。

一方、ヤッホーの井手社長はキリンから出資を受けることについて、「創業時からこのパターンに持ち込むつもりでいた」と語っていた。今後は自社の製造設備を増やさず、キリンビールに製造を委託して売上げ拡大を目指す方針だ。

限定商品のネット販売拡大も

今回、ヤッホーが限定商品を発売した『Amazon.co.jp限定商品ストア』は、ラインナップを強化中だ。13年10月のオープン当初1700点だった限定商品は、現在で2800点以上に拡大している。もっとも、アマゾンジャパンでの酒の直販は14年4月にスタートしたばかり。15万種類という日本最大級の品揃えを売りに、認知度向上を狙っている。

12月1日の新商品発表会では、ヤッホーの井手社長が商品パッケージにあしらわれたキャラクターに扮して現れた。写真右はアマゾンジャパンの前田氏

アマゾンジャパンの前田宏・バイスプレジデントは、今回の取り組みについて、「お酒ストアの知名度はまだ低い。ヤッホーさんとの取り組みが起爆剤となり、アマゾンで酒を買うことが広まってほしい」と期待を寄せる。

井手社長は、「現状では実店舗にあまりヤッホーの商品が置かれていないため、ネット販売が伸びている。ただ、商品が置いてある店舗が広がれば、ネッ トの伸びも頭打ちになる。その後は『月面画報』のような限定商品が有効になる」と、実店舗での拡大を見据えて、限定品のネット販売を広げる方針を示唆した。

ビール市場が縮小する中、クラフトビールは数少ない成長カテゴリーとして期待される。キリンビールとの資本業務提携やアマゾンでの限定品販売は、いずれも井手社長の働きかけから実現したもの。今後のさらなる成長に向け、異色の社長の手腕が注目を集めそうだ。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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