キリンも見込んだビール会社が次なる一手 長野のビールメーカーがネットで新展開
日本のビールメーカーが初めてアマゾン限定商品を開発し、12月から販売を始めた。といっても、売り出したのは大手メーカーではない。長野県に本社を置くヤッホーブルーイングだ。「よなよなエール」、「水曜日のネコ」など、個性的なブランドで、クラフトビールを展開している。
明確な定義はないが、クラフトビールは規模の小さな醸造所で造られるビールを指すことが多い。業界の推計では、現在の市場規模は、ビール類(発泡酒・第3のビール含む)のわずか0.5%、年間2.7万キロリットル程度。1996年に設立され、従業員103名(2014年12月1日時点)を抱えるヤッホーはこのニッチなカテゴリーで”シェアトップ”を走る。
親会社は国内各地で高級旅館やリゾートホテルを手がける、あの星野リゾートだ。2008年から2代目のヤッホー社長を務めるのは井手直行氏(47)。個人経営の広告代理店で営業の仕事をしていた頃、クライアントだった星野リゾートグループの星野佳路社長から「ビール事業を始める」と声をかけられ、創業メンバーとして入社した。
キリンビールと提携
価格競争に巻き込まれることなく、ヤッホーは9年連続で増収増益を達成し、「利益率は二ケタを確保している」(井手社長)という。実際、アマゾンにおける商品の販売価格を見ても、その違いは明らかだ。350ミリリットル・24缶入りの価格は、アサヒビールの「スーパードライ」が4406円、キリンビールの「一番搾り」が4515円。これに対し、ヤッホーが限定商品として売り出した「月面画報」は6912円と、大手の看板商品に比べて1本あたり100円程度高い。
売上高は開示していないものの、ヤッホーではインターネットの販売が全体の約3割を占める。大手ビールメーカーが1%に満たないことを考えれば、この比率の高さは大きな特徴といえる。楽天市場の4万店以上の店舗から毎年140店が選ばれる「ショップオブザイヤー」には7年連続で選ばれている。独自の展開で存在感を高めるこの会社に目をつけたのがキリンビールだ。今年9月に同社はヤッホーとの業務提携と出資を発表。星野リゾートの保有株式の一部譲り受けと、増資の引き受けで合計33.4%取得した。
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