(産業天気図・化学)石化は材料高の価格転嫁進む、情報電子関連部材も続伸
主要樹脂の堅調な需要と電子材料関連資材の好調を背景として、2004年度の化学大手の業績は増益を確保できそうな模様だ。
2004年3月の主要4樹脂(ポリエチ、ポリプロ、ポリスチなど)の国内出荷量は全て前年同月比プラスとなった。特に家電や自動車、包装フィルム向けの好調を受けて、低密度ポリエチレンやポリプロピレンは過去最高の出荷量を記録するなど、国内需要にも明るさがみえてきた。2004年に入り石油化学製品の基礎原料であるナフサの価格が高止まりしているが、中国を中心としたアジア需要の拡大による需給の逼迫と国際市況の急騰を背景として、国内向け価格の値上げも浸透の機運が高まり、石油化学事業の収益は向上する見通しだ。
さらに液晶やPDPなどの表示体用材料や回路製品材料など電子材料は需要の拡大が続き、収益の牽引役となる見通しだ。
総合石化大手の三菱化学は営業利益の3割を稼ぐヘルスケア部門は薬価改定が響くものの、記録型DVDなど光ディスクの数量拡大に加えて、石油化学部門も原料高の価格転嫁が進み採算が改善する見込み。営業利益は前期比6%増の1000億円に達する。
石化関連の事業比率の高い三井化学は、前2003年度は原料ナフサ高騰と円高の進行によりポリオレフィンなど石油化学事業やウレタンの利益悪化で営業利益は前期比10%減の510億円程度となった模様。だが、2004年度は国内での製品値上げが進んでおり、石油化学や基礎化学部門の利益回復の見通しだ。さらに成長戦略の軸に据えた機能性材料もPDP用光学フィルターなどが好調だ。営業利益は600億円と同18%増と程度は期待できそうだ。
住友化学は2004年度も情報電子化学部門が引き続き収益の牽引役となりそうだ。韓国で倍増設を行った液晶部材のカラーフィルターがフル寄与するほか、韓国や台湾、中国で能力増強を進めている偏光フィルムが収益に貢献してくる見込みだ。
信越化学工業は半導体ウエハが200ミリ以下の従来品が需要拡大で出荷数量が高水準を維持しているほか、半導体各社の300ミリウエハ対応の設備投資拡大を受けた増産投資により、2004年度も収益拡大の牽引役となる見込みだ。塩ビ樹脂も収益柱の米国子会社が引き続き住宅着工の好調を背景とした市況堅調により利益を伸ばす。さらにこれまで懸念材料とされてきた国内の塩ビ樹脂事業も、中国需要拡大によるアジア市況上昇を背景とした需給好転が期待できそうだ。これで2004年度で10期連続で最高益を更新する見込みだ。
【田原哲雄記者】
(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら