総選挙は、長期デフレ脱却の「最終ハードル」 世界が注目する「12.14アベノミクス審判」

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アベノミクスの中でも特に金融緩和政策についてどのように考えるかについて、各党で意見が分かれているが、この点は極めて重要である。

中央銀行の「独立性」について、正しい認識を

各党の公約をみると、金融政策について、「目標の独立性」と「手段の独立性」の違いをしっかり認識していないと思われる文言がある。具体的には、日本銀行の政策変更が「柔軟に」行われるように、政府が常に介入すべきと読める政権公約になっている党が、見受けられる。

ただ、世界の常識だが、中央銀行は金融政策の手段と判断について独立性を持っており、それに対して政府は介入できない。

安倍政権が実現した金融緩和強化は、2パーセントのインフレ目標を日本銀行に課して、目標実現に強い意志を持った人物をリーダーにして、体制を変えたことで実現した。前出の中央銀行の話と矛盾するのではないか、という問いかけがあるかもしれない。

だが、中央銀行は、国民の信を得た政府と目標を共有するのだから、目標設定については独立性を持たないのは当然だ。その一方で中央銀行は、手段や判断については独立性を保ちながら金融政策を遂行する。

実際に、安倍首相が実質的に選んだ黒田総裁率いる日本銀行は、独立した判断によって金融緩和強化を実現して、政府が掲げる目標実現に邁進した。そして、名目賃金が約20年ぶりの伸びに高まるなど、金融緩和強化の効果は表れたのである。

いずれにしても、金融政策の影響の大きさを正しく理解し、妥当な考えを持つ政府が経済政策運営をすることが極めて重要だ。それによって、長年デフレに苦しんだ日本経済は復活を果たすだろう。
 

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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