幸楽苑「290円ラーメン」販売中止の衝撃 高単価路線への転換で大勝負へ

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新井田社長は「大好評の岡山県限定ラーメンを見て、290円の中華そばをやめる決心がついた。今の外食業界は低価格路線が失敗している。高単価商品で勝負するグッドタイミングだと感じた。この新商品はわが社を救う“渾身の一杯”になるだろう」と語る。

この新主力商品の投入により、2015年度の売上高は前期(計画)比6.6%増の400億円を達成できると、同社はそろばんを弾く。「客単価が50~80円はアップすると見ている」(新井田社長)ためだ。たとえ50円の単価アップとしても年間6500万人の来店客に掛け合わせれば、約33億円の増収になる、というのが年商400億円の根拠だ。

来年度は40店ほどを新規出店し、客数の増加につなげる意向。客単価の向上が同社の想定どおりに進めば、約500の既存直営店舗の採算も改善し、ここ数年の業績低迷からも脱却できるとしている。

不安要素も少なくない

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290円の中華そばの集客効果は決して小さくない(撮影:今井康一)

ただ、看板商品である290円の中華そばがなくなるマイナス影響は少なくないだろう。売上比率は確かに17%にまで下がっているが、首都圏では290円の安さに惹かれて来店する客も多く、ギョーザや“ちょい飲み”などで結果的に600円台の平均客単価につながっているとの見方もある。

つまり、290円中華そばの客寄せ効果は、同社が考えているよりも大きいかもしれないのだ。さらに、岡山で好まれた味が本当に全国で通じるのか、といった不安も残る。

高単価路線に乗り出す乾坤一擲の大転換に、はたして既存の得意客がどう反応するのか。もし、これがうまくいけば、脱デフレを目指すアベノミクスがラーメン業界にも波及したことを意味する。岡山生まれの“渾身の一杯”に、幸楽苑とラーメン業界の未来が委ねられているのかもしれない。

鈴木 雅幸 東洋経済 記者

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すずき まさゆき / Masayuki Suzuki
2001年東洋経済新報社入社。2005年『週刊東洋経済』副編集長を経て、2008年7月~2010年9月、2012年4月~9月に同誌編集長を務めた。2012年10月証券部長、2013年10月メディア編集部長、2014年10月会社四季報編集部長。2015年10月デジタルメディア局東洋経済オンライン編集部長(編集局次長兼務)。2016年10月編集局長。2019年1月会社四季報センター長、2020年10月から報道センター長。
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