ソニーの命運は、イメージセンサーが決める 「人の目を超えるセンサー」に掛かる期待

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高画質デジタルカメラやハイエンドスマートフォン市場向けのイメージセンサーで、ソニーは確かに高いシェアを持っている。ソニー側の説明によれば、スマートフォン向けセンサーのシェアは現状40%程度であるが、これを2017年度には50%程度まで引き上げることを狙っている。経営数値目標も2017年度に1.3兆円から1.5兆円の売り上げとしており、2013年度の値に比べて2倍近い。ソニーの経営数値目標の中でもっとも強気な分野である。

しかし、この点に疑問を持つ人もいるはずだ。スマートフォンは成熟市場となっている。高価なセンサーを使う高付加価値型製品の売れ行きの伸びは鈍化し、市場の伸びは低価格製品が担う。技術の進歩により、低価格なセンサーの品質が上がるため、高付加価値なセンサーの市場が食われたり、価格下落が進んだりするのでは……。

この点について、鈴木氏は別の見解を持っている。「現在は、ようやく写真がきちんと撮れるようになったに過ぎない」という見方だ。今後のイメージセンサーでは、暗所性能やハイスピード撮影、ダイナミックレンジの改善などが進む。人間の目では捉えられない領域の映像を撮影できるようになれば、「写真以上」の価値が生まれる。

会場では、同じセンサーで毎秒30コマの動画と毎秒1000コマのスロー映像を撮り、途中で切り換えた映像が示された。そうした「超スロー映像」が簡単に撮影できるイメージセンサーが、「近いうちにスマートフォンに搭載可能になる」(鈴木氏)という。また今後の方針として、「スマホに搭載するセンサーの量が増えてくる」との予測も示した。

これらが示すのは、スマートフォンのイメージセンサーが、「撮影用のカメラ」を超えていく、という想定だ。現在でも、顔認識機能を使った本人認証は可能だ。複数のイメージセンサーの情報を組み合わせると、空間の状態を立体的に把握できるようになる。高フレームレートの映像を使えば、身体の動きなどを高速認識し、遅延なく操作に生かせる。

「目を超えたセンサー」の時代へ

スマートフォンやウェアラブル機器でAR・VR技術を活用する場合には、イメージセンサーを使って外界認識をし、操作に生かす発想が必要だ。高付加価値型スマートフォンでそういった要素が増えていくなら、現在は1台で2つ程度のイメージセンサーが、4つ・6つと増えていく可能性は高い。

すなわち、「目を超えたセンサー」がスマホの進化を促す、と言外に主張しており、そこにデバイス事業の成長源泉もある、ということだ。イメージセンサーの「カメラ以上の価値」については、多くの研究者・ソフト開発者が期待する部分であり、進化の方向性として、異論を唱える専門家は少ないだろう。筆者も妥当なものだと感じる。

また、中長期的な戦略としては、自動運転機能付きの自動車などへのニーズも考えられる。「そうしたニーズでは高度な信号処理やLSIも必要であり、センサー単体でなく、トータルで入っていきたい。車載エレクトロニクス企業に我々が望まれているのもそれはないか」と鈴木氏は見る。

ソニーのエレクトロニクス事業の特徴は、研究開発で先行するデバイスでは強気・攻めの展開、商品面では利益率重視のコンサバ路線、といえる。スマートフォン事業の立て直し、という難題に不透明さは残るものの、2017年に向けて大きな成長が実現できるか否かは、「強気のデバイス事業」の未来戦略の妥当性に掛かっている……とも言えそうだ。

西田 宗千佳 フリージャーナリスト

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にしだ むねちか / Munechika Nishida

得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、『アエラ』『週刊朝日』『週刊現代』『週刊東洋経済』『プレジデント』朝日新聞デジタル、AV WatchASCIIi.jpなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。著書に『ソニーとアップル』(朝日新聞出版)、『漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち』(講談社)、『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』(アスキー新書)、『形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組 』『電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ』『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』(すべてエンターブレイン)、『リアルタイムレポート・デジタル教科書のゆくえ』(TAC出版)、『知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?』(共著、徳間書店)、『災害時 ケータイ&ネット活用BOOK 「つながらない!」とき、どうするか?』(共著、朝日新聞出版)などがある。

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