ソニーの命運は、イメージセンサーが決める 「人の目を超えるセンサー」に掛かる期待
十時氏はソニーモバイル改革の方針として「集中と選択」を掲げる。ソニーモバイルが向かう市場として、スマートフォンが「もはや成熟市場である」(十時氏)という認識に立って、利益率重視の戦略を採る。
まず行うのは、地域戦略の見直しだ。「当然、強い地域を中心に強化を図る」としており、出血の多かった地域、特に中国市場では積極策が採られない。中国市場の中心が低価格帯の製品であり、「成長市場ではあるがソニーの付加価値での差別化が難しい」(十時氏)領域である、という判断もある。ならば、日本・欧米などの強い市場で、高単価・高付加価値の製品に絞るのは必然となる。
同時に示されたのが、製品モデル数の削減だ。販管費・調達コストなどを考えても、バリエーション展開は抑えるべき時期に来ている。ソニーモバイルとしては2014年度に、2012年度比で30%のモデル削減を行うとしている。
ただし、これらの策は、現状から見れば「当然の策」でしかない。具体的にどの地域でどういう製品を用意するのか、新製品投入サイクルの見直しはあるのか、といった具体策に踏み込んでいない点が物足りない。そこまで詳細に発表できる段階にはない、ということなのだろうが、不透明感を残すことになった。「2016年度からは安定的に利益を計上できる構造を作る」としているものの、2015年度に追加の構造改革費用計上の可能性も指摘されており、視界は悪い。
ソニー全体の浮沈を担う分野であり、慎重を期している部分はあるのだろうが、現状では戦略を云々できる段階にない、と言わざるを得ない。
その中で可能性として示されたのは、タブレット事業の収益性である。現状、売り上げの5%を占めるだけの小さなビジネスであり、利益貢献は薄い。「モデル数削減はタブレットも含むものである。だが、現時点で決定していることはない」と十時氏は説明する。タブレット市場減速が懸念される中、ソニーとして価値がない、と判断される可能性もある、ということなのだろう。他方で、やはり売り上げでは5%と小さい、ウェアラブルを含むモバイル向けアクセサリーについて、十時氏は「プロダクトの世界観を演出するために必要なのものであり、総合的な判断が必要」とコメントしている。
底堅いゲーム
ゲーム&ネットワークビジネスについては「堅調」の一言だ。堅い収益基盤と成長性を軸とし、ソニー全体を底支えする存在になりつつある、という印象すら受ける。PlayStation 4ビジネスの好調さを背景に、「プレイステーションユーザーの維持と拡大」と「ARPPU(購買ユーザー一人あたりの売り上げ)の向上と関連売上増大」を軸とする。ゲームソフトの単純な売り上げだけでなく、ネットワークサービスやダウンロードコンテンツ販売などの「売り上げ機会拡大と多様化」が進展中で、懸念材料も小さい。
こうした事業が好調であるうちに、クラウド型ゲームサービスの「PlayStation Now」、2015年度第1四半期より米国で試験サービスを始めるクラウド型テレビサービス「PlayStation Vue」といった次世代向けの投資と事業開発を行い、事業ポートフォリオに占めるサービス収入比率を高めてより基盤強化を狙う……、という方向性に見える。
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