しかしタブレット端末を用いれば、たとえば教室の40人分の生徒の解答を電子黒板で一度に表示することができ、「あいつすごいな!」という声が生徒の中から上がってきたりします。全員の解答を表示させて、子どもたちに議論させることがあってもいいと思うのです。
そうなると、自分だけ答えを書いてないと恥ずかしいという気持ちが生徒の中に生まれます。そのため、何かしら答えを書こうと思う子どもが増えるはずです。自然と、積極的に授業に参加するようになり、しだいに授業が楽しくなってくる。そうなると、学校そのものも楽しくなるといういいサイクルが生まれていきます。
金太郎飴じゃない授業を!
――タブレット導入について、ほかにもメリットはありますか?
池田:私は今年4月に着任して、学校現場などを見て回りましたが、特別支援学校の取り組みが印象に残っています。特別支援学校では教科書のバリアフリー法というものがあって、著作権のことをあまり気にしなくていいのです。自由にコンテンツを利用できます。iPadは画面を拡大したり、子どもの障害に合わせて使い方をカスタマイズできます。市販のコンテンツも豊富にありますし、とても便利です。
たとえば、多動ぎみの子どもに、iPadを用いて漢字をなぞる学習がなされていました。使う前には、不安に感じていた先生もいたようですが、実際に手に取らせてみたら、子どもたちは実に一生懸命集中してやったのです。先生方もびっくりしていました。
福田:これ以外に、電子黒板も特徴的な使い方がされています。たとえば、ある支援学校では、電子黒板に教頭先生がお辞儀をしている映像を映しておいて、朝、登校してきた子どもたちはそれにタッチすると、教頭先生の声で「おはよう」と言ってまたお辞儀をしてくれます。それで子どもたちはお辞儀とは何かをちゃんと覚えるのです。今までできなかったことが、手厚くできる。このようなことを地道にきちんと広めて行ったら、日本全国でICTのよさがわかるのではないかと思います。
――今後、タブレットを用いた教育で何を目指しますか。
福田:現在の取り組みは県立学校(中・高・特別支援学校)が対象ですが、市町でも、高校での指導を見据えて、中学3年生からタブレット端末を持たせようという声が県内で少しずつ出て来ています。もし持たせるとしたら、義務教育からということになりますので、教科書無償法の範囲はどこまでなのか、国にはきちんと明示する必要があるとお願いしています。
今は知識を紙に写したものが教科書に当たりますが、それをデータで見る場合には端末が必要になります。その場合、国はどう対応されるのか。国がその方針を示すだけで、現場は動きやすくなります。
ただ、現在、市販されているタブレット端末の中身についても、まだまだ精査が必要です。今のタブレット端末に入っているすべての機能が本当に必要なのか、削ぎ落とせるものはないのか。逆に追加すべきものはないのか、今後も引き続き検討する必要があると考えています。
――現場の先生たちへ伝えたいことはありますか?
福田:ぜひ先生方には、タブレット端末を使って、授業を工夫してほしいと考えています。金太郎飴のように同じやり方をするのではもったいないと思います。面白い発想に基づいて、それぞれに授業を行ってほしいのです。
また、生徒に自由度を持たせてほしいです。あまり自信のない先生は生徒を同じ方向にまとめたがることもありますが、生徒の自主性に任せてほしい。そうすると、生徒は思いもつかない面白い発想をしてくるはずで、それこそが私たちが目指したいところなのです。
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