最先端?佐賀県「ITで教育改革」のなぜ 県立高校生は全員5万円端末購入など続々

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英語も、数学も、教え方の可能性が広がる

――そこまでしてICT教育を導入したいと思った理由、また実際の利点は何でしょうか? 具体的に何が可能になるのでしょうか。

福田:日頃、教員がいちばん苦労しているのは「引き付け」です。私自身も教員をしていたのでわかるのですが、どうしたら子どもたちに授業に興味を持ってもらえるか、納得してもらえるか、教員たちは非常に苦労をしています。

その点、「引き付け」の道具としてICTはとても有効です。子どもたちが面白がって、積極的に授業に参加するようになっています。

もうひとつ、従来は指導がしにくかったことが、教えやすくなるという点もあります。私たちの世代では、コミュニケーションは苦手という英語の先生もおられました。それでも、当時はALT(ネーティブの英語教師)を入れてカバーしようとしましたが、それがベストではありませんでした。ところが電子黒板があると、そのカラオケ機能を使って、ネーティブの発音を子どもたちに聞かせたりしています。子どもたちも、タブレットがあると自分たちで自主的に聞ける。

また、数学では、図形の話をしてもイメージができないと解けませんよね。ですが、電子黒板やタブレット端末で見せてあげると、ぱっと理解できたりします。教員は、自分が授業で困ったときに、タブレット端末や電子黒板を活用すればいいと思っています。

――いいことばかりに聞こえますが、弊害や障害もありますか。

福田:議論が間違っていると思うのは、これまでの日本の教育手法がまるっきり変わってしまうと思っている人がいることです。佐賀県武雄市の場合も、タブレットとともに反転学習が取り入れられていますが、それがやたらとセンセーショナルに取り上げられました。「学校の教員は授業をしなくてもいい」と勘違いされてしまったのです。

遠隔授業についても、どこか遠くにいる著名な教員が、複数の学校に向けて一斉授業を行い、現場にいる教員はあまり授業をしないで質問だけ受ければいいと言われました。でも、それは違います。ICTは現場に足りない部分を補完する道具であり、先生方には工夫してもらいたいのです。

――先生への研修はどのようにされたのでしょうか?

福田:先生が子どもの前で恥をかくと授業になりません。恥をかくならそれなりの準備をして、恥をかいてもらおうと思います。何も準備しないで恥をさらすのとでは、全然、違います。これまでの研修では、すべての先生に使えるようになってほしいということをゴールにしていましたが、これからは先生おのおのが工夫して、ICT機器を利用してほしいと考えています。

また、ICTを教育に取り入れることの利点として、作業の効率化が挙げられます。これまでの紙の小テストは、主人公は子どもたちではなく先生でした。先生が自ら教えた内容について、生徒がどのくらい理解しているかを把握するためのものになっていたきらいがあります。

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