モバイル革命は、100年で3度目の大変革だ 起こりつつある「E2E経済」の衝撃
過去100年の経済活動は、3つの段階に大別できると考えています。
第1段階は、「組織中心の経済」です。この経済における企業は、個々の顧客ニーズへの対応よりも、生産効率の向上に重きを置くという特徴をもちます。つまり、生産は計画に従って行われ、計画の変更はありません。例えば、ある製品は青、緑、赤などの限られた色で製造され、全色売れることが期待されます。企業は、売れなかった色の製品をシーズンの終わりに一掃し、別の新色モデルへと生産を移行します。
顧客の声に耳を傾けることはまれで、企業は、顧客を、明確に定義されたセグメントの一部としてグループ化しているだけでした。ある時点においては、第1段階の「組織中心の経済」パラダイムは、多くの点で企業や消費者に良い結果をもたらし、急速な経済発展と、大量消費を促す市場経済の確立に寄与しました。しかし、やがては、更なる消費者の欲求の高まりとともに、より深いニーズに対応する高い価値を提供できる企業の登場が切望されるようになりました。
結果として2000年以降、経済活動の第2段階である「個人中心の経済」が登場しました。これは、今日の社会で見られるものです。個人中心経済における企業は、個々の顧客ニーズや期待を、自社の製品・サービスに反映させることに重点を置くという特徴をもちます。顧客は、製品やサービスに対して個別化と即応性を求め、自らの生活・業務スタイルに最適化され、自分でオプションを選択できるオムニチャネルの体験を望みます。この傾向は、自分自身を特定の顧客セグメントの一員ではなく個人として捉えている若い世代ほど顕著です。
たとえば、この傾向に対応するために、小売業では、マス・カスタマイゼーションと呼ばれる個別化されたアプローチを活用し始めました。Warby Parker(北米の眼鏡小売)では、オンラインでレンズの種類・度数や、眼鏡フレームを選択・購買することができます。個々の顧客に直販することで、リアル店舗はほとんど設けていません。また、衣料メーカーのJockeyが新たに開発した体積測定型ブラジャーは、新しいサイズ選択システムを特徴とし、55通りものサイズの組み合せを提供します。
E2E経済の4つの要素
そして時代は、経済活動の第3段階である「everyone-to-everyone(E2E)経済」へと向かいつつあります。
E2E経済では、顧客「個人」と企業「組織」の関係性自体が変質します。両者の役割があいまいになり、より顧客の嗜好に合わせた体験が創出されるようになります。E2E経済は、「綿密な調整」、「共生的」、「状況に適合」、「認知的(コグニティブ)」という4つの要素を特徴とします。
「綿密な調整」とは、ある特定の組織または個人によって相互作用や結果が導かれる環境を指します。このような環境は、経済エコシステムとも呼ばれ、相互に利己主義的な環境が広がっています。今後、従来型の市場から経済エコシステムへの移行が、さまざまな分野で頻繁に見られるようになるでしょう。
例えば、サンフランシスコに拠点を置く物流業者のDoormanは、宅配便の「ラスト・マイル」問題を解決するため、荷物の保管と配送に関する綿密な調整を行っています。この綿密に調整されたサービスのおかげで、FedExやUPSなどの運送業者は、顧客の都合に合わせた深夜までの荷物の受け取りと配達という、従来出来なかったサービスを実現できます。
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