弥生は、なぜオリックス傘下に入るのか 岡本社長が語る800億円買収の背景
――オリックスは、2011年に、一度、弥生の買収を断念したという経緯もありますね。
あのときは、買収金額の条件が折り合わなかったということに尽きるといえます。今回は「縁」があったということなのでしょう。
――今年の夏から話し合いが始まり、11月に発表ですから、かなりトントン拍子に決まった感じがしますが。
方向性が決まってからは速かったですね。オリックスは、長年に渡って、弥生に関心を持っていたようですから、デューデリジェンスについても進めていたでしょうし、そのあたりも短期間で買収が決定した理由のひとつだと思います。今回、弥生は同時に上場も検討していたわけですから、オリックスグループにとっては、買収するのならば、上場する前に行いたい、これが最後のチャンスだという意識が働いたともいえるでしょう。
――そもそも、売却先の候補はたくさんありそうですが、なぜオリックスグループなのでしょうか。
事実関係という点からいえば、これまでの投資ファンドであるMBKパートナーズと、オリックスとの話し合いにより、MBKパートナーズが所有する99.9%の株式を、オリックスに約800億円で売却するということになります。弥生自身が、オリックスを選んだということではありません。
ただ、私は社長就任以来、10年、20年の長期に渡って、顧客に価値を提供できるような新たな株主を見つけることが仕事のひとつだと思っていましたし、今後、弥生が健全な成長を実現するうえで、どういった株主が望ましいのかということに対しても意見を述べていました。結果的にはいい株主に恵まれたと思っています。
弥生とオリックスの根本は似ている
――それはなぜですか。
最大の理由は、オリックスは、われわれが持っていないものを持っているという点です。今後も、弥生としてよりよい価値を、顧客に対して提供していくことに変わりはありません。しかし、新しい株主のもとで事業を進めるのであれば、その計画をより加速させることができるようなものを持つ株主の方が望ましい。オリックスグループはわれわれの事業とは一定の距離を持ちながらも、弥生にとってメリットを及ぼす可能性がある事業を持っている。その点でいい株主に恵まれたといえるわけです。
しかしその一方で、私は、弥生とオリックスが提供している価値は、根源的に同じものだと思っています。オリックスはリース事業からスタートした会社であり、現在ではレンタルやカーシェアリングといった事業も行っています。リース事業は、所有権と利用権を分離する事業であり、それを小口化したのがレンタル事業やシェアリング事業です。これに対して、弥生の製品は、知的所有権はわれわれが持っており、それを利用権として提供している。これを小口化して、小規模事業者向けにも利用できる価格で提供している。弥生はITの会社であり、オリックスは金融の会社というように捉えられていますが、提供している価値は同じです。
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