<ビジネスシーン別>デキる!敬語術 鈴木昭夫著 ~真っ当な敬語を教えるただ唯一の書

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しかし、本書の「はじめに」によれば、この「敬語の指針」に依拠した敬語のマニュアル本は存在しないのだそうだ。つまりいまだに違和感のある敬語の解説本が書店の書棚にあるということだ。そして、真っ当な敬語を教えてくれるのは本書だけということだ。

本の構成はシンプル。見開きの最初に誤用と正解が引用され、なぜ間違っているのかが解説されている。いくつかの例を引いてみよう。

×「専務、知らせたいことがあります」」
○「専務、お耳に入れたいことがあります」
×「部長のおっしゃられたようにいたしました」
○「部長のおっしゃったようにいたしました」
×「このたび、新製品を開発させていただきました」
○「このたび、新製品を開発いたしました」
×「そんな約束は、できません」
○「そのようなお約束は、いたしかねます」

誤用と正解が並んでいればすぐに理解できるが、誤用の文だけを見せられたら、何人が正解できるだろうか。けっこう難易度が高い。

面白い解説もある。50代以上の人の中には相手の褒め言葉に対して、「とんでもございません」と話すことを誤用と感じる人がいると思う。「とんでもな・い」という形容詞だから、「とんでもな・く」という活用はありえても、「とんでも・ございません」はヘンという理屈だ。

しかし文化庁の「敬語の指針」では、この表現について「現在では、こうした状況で使うことは問題がない」としている。あまりに普及してしまったので追認せざるをえなかったのだろう。

言葉はビジネスの基本装備。敬語を磨けばコミュニケーションスキルも上がる。若手社員の研修に使えば効果は大きいだろう。もっとも多くの若者が「よろしかったでしょうか」などのマニュアル敬語をバイト先でたたき込まれてきている。そんな若者こそ、敬語スキルを磨く必要があると思う。

(HRプロ嘱託研究員:佃光博=東洋経済HRオンライン)

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