ましてや、「キャラクタービジネス」に関連して、「独自のオリジナルな製品」などがイノベーティブに開発されたわけでは、必ずしもありません。多くの場合は、単に「携帯カバー」にキャラクターをつけたり、地元のおまんじゅうにキャラクターをつけたり、そういった既存商品のデザインを変えるだけに使われているケースも多いわけです。
付加価値高まらず、経済効果の根拠も薄弱
新たなキャラクター商品による売上げが、既存商品の売上げから置き代わっているという構造もあるのです。逆に言えば、地元やその他を含めて、多くの事業者が、単にキャラクターをくっつけて商品を売ればいいだけですから、ブームに簡単に便乗できます。地元からも支持されやすいとも言えます。
ただし、ここでより深刻な問題は、多くの場合、根本的に製品の技術性能やサービスの優位性などによって、より生産性の低い商品から置き代わって売れているわけではない、ということなのです。
商品改善など、地道な経営努力をせずに、「自治体におんぶにだっこ」で、ゆるキャラヒットに便乗して商品を売ろうという話が地域活性化策であるとすれば、それは筋が悪いですし、長続きはしないのではないでしょうか。
もちろん、個別の民間企業が皆でおカネを出して、ブランド形成のためにプロモーションをやるのであれば理解できます。しかし、「マスマーケティング」的な発想で、中身がスカスカなのにもかかわらず、「キャラ人気」でどうにか物を売ろうという、浅はかなる取り組みを、よりによって自治体が全力で税金を使って展開してしまう。しかも、「地域活性化の切り札」とも言われてしまうわけですから、政策企画力の低下も甚だしい、と思わずにはいられません。
ゆるキャラなどによる地域活性化に対する希薄な考え方を、それっぽく見えるように支えているものの一つとして、「経済効果」というキーワードが挙げられると思います。「これだけ経済的な効果がありました」、などといいながら、事業を肯定化するわけですが、この数字の根拠は怪しいといわざるをえません。ゆるキャラ関連だけではなく、常々、世の中で唱えられるこの「経済効果」がまともに実体経済に発生して、成長に繋がっていれば、日本の経済成長は万々歳なわけですが、地域活性化分野の経済効果も、注意してみないといけないわけです。
例えば、かの有名な熊本県庁がPRキャラクターとして採用している「くまモン」の場合には、日銀の熊本支店が気を利かせたのか、2013年末に「1000億円超の経済効果」、と謳ったわけです。しかしながら、数字の根拠を見ると、「くまモンをつけた関連商品売上高」のアンケート調査が主体になっています。
前述したような、実際の経済全体を見据えた上でのマイナス効果も考慮されず、何でもかんでも売上げから産業連関分析に基づく効果まで、積算してしまっての効果をあげています。
しかしながら、こんな数字が出れば、ひとり歩きをはじめて、一気に他の自治体も「くまモンにつづけー」といった具合に参入しかねません。せっかくのくまモンも、ご愁傷様です。
さらには、戦いは過熱しており、最近はコンテストなどで優勝するため、メディア露出を高めるために、莫大な予算を広告代理店に支払ったりして戦っているケースがあります。これは、結局は、キャラクターを活用する民間企業と共に、プロモーターなどのビジネスプレーヤーに税金が搾取されているだけとも言えます。
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