制度設計については賛否あるものの、4月の保険適用はゴールではなくスタート。ここからさらに議論を深めていくことが大事になる。その1つが、「先進医療」の扱いだ。先進医療は国が認めた特別な検査や治療のことで、対象となった薬や治療機器、治療法などは原則、自費となるが、保険診療と併用することが可能だ。
不妊治療でも先進医療がいくつか認められた(ただし、これらの先進医療を行うには施設基準があり、届け出が必要)。受精卵を観察・培養する際の、受精卵への負担を軽減する「タイムラプス」などの技術が該当する。また、着床前診断のようにスタート時点では先進医療として認められなかったものに関しても、安全性や有効性が臨床研究を経て認められれば、対象となる可能性がある。
ただ、「これまでは自由診療で各クリニックが最先端の技術をどんどん取り入れて、データが積み上がって、そのデータをみた別のクリニックにもその技術が普及して……という流れがあった。保険適用でこの流れはなくなるので、不妊治療の進化のスピードは遅くなる」(リプロダクションクリニック石川医師)とみられる。
保険適用の「恩恵」誰のもの
取材を通して多く聞かれたのは、「今回の保険適用は一般的な治療で妊娠できる可能性が高い、若い人が恩恵を授かれる制度」であるということ。もちろん政府の方針にそのようなことは書かれていないが、年齢制限や診療報酬の設定、先進医療の扱いなどからそう感じる人は少なくない。
そのため、保険適用の対象外となる43歳以上の女性、保険適用の範囲外の治療を受けたい人はその恩恵に授かれないばかりか、クリニックの混雑や技術進歩のスピードの鈍化など、不利益を被りかねない。前出の太田さんもそのひとりだ。
「私のように治療を続けていて、それでも子どもを授からないような人、オーダーメードの治療が必要な人へのサポートがちょっと忘れられているというか、そこに目が向けられていないところが残念です。そこは私たちが声を上げることで変えていけたら」――。
大きな転換点を迎えた不妊治療。より多くの人にとって納得感のある制度作りが、引き続き求められている。
(1日目第2回は不妊治療のお金「保険適用」でどう変化?実例検証)
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