不妊治療「最大手クリニック」あえて自由診療の訳 保険適用で費用負担は減るが治療内容に影響も

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さらに、治療内容へ別の影響を心配する声もある。

日本医科大学付属病院女性診療科・産科教授の明樂(あきら)重夫医師は「体外受精や顕微授精の費用面でのハードルが下がったことで、安易に体外受精を勧められるケースが増える可能性がある」と指摘する。

不妊は検査をしても原因がわからない場合も少なくない。そのため、どの治療を選択するかの線引きは曖昧だ。「患者自身が最初から体外受精を望むなら問題ないが、基本的にはタイミング法などより初期段階の不妊治療からスタートするべき。今回、人工授精も保険適用となったが、そうした体外受精以外の治療法も医師とよく検討してほしい」(明樂医師)という。

保険適用「患者の金銭負担減」以外のメリット

もちろん患者からすれば、不妊治療の保険適用を歓迎する声が圧倒的に多い。3年前まで治療を受け、2人の子どもを授かった女性(44歳)は、「不妊治療には総額500万円くらいつぎ込んだ。もし当時保険が使えて、その3割で済んでいたら、経済的にものすごく助かっていた。なので、お金の問題で治療が受けられなかった人にとっては、とてもいいんじゃないかなと思って報道を見ていた」と話す。また、前出の太田さんも、「社会で広く話題になることで、治療のハードルが下がったり、理解が進んだりする可能性があり、よいと思う」という。

社会保障に詳しい第一生命経済研究所の重原正明研究理事は、不妊治療の保険適用について、2つのメリットを挙げる。1つは患者への金銭的な支援につながるという点、そしてもう1つは「治療の標準化」が進むという点だ。治療の標準化とは何なのか。重原さんはこう解説する。

「不妊治療はこれまで、自費診療として各クリニックが独自の方針で治療を行っていました。そのため、治療を受けようとする人にとって、治療の実態がわかりにくい面があった。保険診療になれば治療法がある程度決まってくるため、(治療の内容や費用が)わかりやすくなるのではないでしょうか」

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