しかし、文科省の資料でたびたび示される「特別支援教育の対象の概念図」(2007年時点)では、「医師による診断ではない」という注記はあるものの、発達障害児は「6.3%程度の在籍率(約68万人)」と記されている。
こうして6.3%という数字は、あたかも発達障害を持つ児童の平均在籍率であるかのように学校現場に広がっていった。実際、2002年の調査結果を知った現場の教員たちの反応は、「クラスに2、3人はいた問題のある児童は発達障害だったのか、と腑に落ちた」(40代の教員)というものだったという。
「クラスに2人」が社会にも浸透
初めての調査から10年後の2012年、再び調査が行われた。この調査を行うための協力者会議の議事録によると、「通常の学校の教員にとっては、この調査(編集部注:2002年の文科省調査)をすることにより、教員が子どもの様子を見取る姿勢ができたことは確かである」(協力者会議の委員)と、前回の調査が高く評価されていた。
2012年の調査は、2002年とほぼ同じ質問項目で実施された。対象は全国(東日本大震災の被害地3県を除く)の1200校。その結果、通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある児童生徒は、6.5%だった。
調査結果は、全国紙で「発達障害、小中学生の6.5%」(日本経済新聞 2012年12月6日)、「発達障害児『学級に2人』」(朝日新聞 同日)と大きく報じられた。
2002年と比べ調査対象の学校が増えたものの、教師が児童を点数評価する手法に変わりはない。この調査を根拠に「発達障害児が6%いる」という認識が、学校だけでなく社会全体に浸透していった。
「結果が一人歩きする」。一部の教師の懸念は、現在の発達障害児の急増を予見していたかのようだ。
では、なぜ文科省の調査は行われたのだろうか。調査は発達障害の支援を進めるため、必要に迫られたものだった。
(第6回はこちら「学校で『発達障害』の子どもが急増する本当の理由」)
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