集中力のない凡才と凄まじい天才を分ける決定差 大谷翔平、藤井竜王に共通するイメージ力の秘訣

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藤井竜王は対局で盤面を、大谷選手はバッターボックスでピッチャーを見ます。同時に頭のなかにある「イメージ空間」では、記憶や経験をもとに直面した課題の対処法を模索。カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部脳機能マッピング部門の実験では、頭のなかでイメージしたものを動かしているときに脳の前頭前野が活性化することがわかっています。この前頭前野は「脳の司令塔」とも呼ばれ、じつは集中力も前頭前野の担当です。

つまり頭のなかで何かをイメージし、それを動かしているときは集中力も働いているのです。やっていることは違えど、二人はイメージ空間の使い方も深く集中するプロセスも同じと言えるでしょう。

藤井竜王は対局中、まず目で実際の盤面の状況を把握します。その後意識はイメージ空間内に移動し、現在の盤面パターンをもとに脳内の記憶から対応策を検索。それを参考にイメージ空間で駒を動かして検討し、最適解が出たら実際に駒を動かすわけです。

大谷選手も流れは同じで、まず相手ピッチャーの動作パターンを見ます。それに一致する情報を、イメージ空間内に保管された膨大なパターンから瞬時に検索し、ボールの動きを予測。そのボールに対処できる最適解のスイングを見つけ出してバットを振る、という流れです。

彼らはイメージ空間を使いこなしている

この能力は、藤井竜王は子どものころに受けたモンテッソーリ教育や立体パズルの挑戦、そして詰将棋などによって育まれたのではないかと想像できます。大谷選手は子どものころ、かつて選手として活躍していた母親とバドミントンをしたことや、高校時代につけていた目標達成シートでのイメージングが、この能力の向上に役立ったのでしょう。

実際、あるインタビューで大谷選手はこう語っています。「僕はどちらかというと、頭のなかで考えたほうが上手くなれることが多いんです。頭のなかで考えて、明日のブルペンではこうやろうと決めて、いきなり投げたほうが、いい感覚をつかめることが多い」

彼らはイメージ空間を使いこなしているからこそ、あれだけのパフォーマンスを発揮できるのでしょう。そしてイメージ空間に入り込んでいるときは、非常に高い集中力が発揮できています。つまり、イメージ空間に入ってイメージしたものを自在に動かすスキルを磨けば、集中力は勝手についていくということです。

このイメージ空間は誰もが持っています。楽しいことに没頭していたら頭のなかで何かが組み合わさってひらめくのも、本を読んでいるときに目で文字を見ると同時に登場人物や風景がありありと浮かぶのも、すべてイメージ空間での出来事です。この空間を使いこなすことが大事なのです。

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