ウクライナ戦争、身動き取れぬ中国が決断する日 あいまいな態度の裏にあるロシアとの複雑な関係
こうした中ロの歴史を踏まえると、米中対立が構造化し激しさを増している今、中国にロシアを切り捨てるという選択肢はないだろう。だからと言って今や侵略国家となったロシアを全面的に支援するということも難しい。
仮に中国が欧米諸国と同じようにロシアを侵略国であるとして切り捨てればどうなるか。
ロシアはさらに劣勢に陥り、ウクライナ戦争の結果いかんにかかわらず、衰退を加速させるだろう。もちろん中国との蜜月関係は終焉する。国連安保理などで中ロが共同歩調をとることも減り、中国の孤立化が進む可能性が出てくる。また米中対立が解消するわけでもない。ウクライナ問題と米中対立は別の話であり、引き続き緊張状態が続く。つまり、中国にとってメリットはほとんどない選択肢なのだ。
では逆に苦境にあるロシアを支持し、経済・軍事的支援に踏み切ることができるか。こちらの選択肢も容易ではない。
まず欧米との対立が決定的となり、バイデン大統領が牽制しているように中国もロシア同様の制裁対象となりうる。さらに米中対立も経済面だけでなく安全保障の面など幅広く深刻化し、それらが中国の国内経済に大きな影響を与えるだろう。
米中関係を見ながらあいまいな態度に終始
一方、ウクライナ戦争の出口が見えない中、ロシア自体が中国にとって経済、軍事面でどこまでお荷物になるかもわからない。また大国が中小国を力の論理で侵略し国家主権を犯すというロシアの行為を支持すれば、中国自身が掲げてきた「すべての国の国家主権、領土保全を尊重」という主張に矛盾することになる。当然、国際社会で批判を受けることは避けられず、一帯一路政策などによる莫大な資金提供を投じて作り上げてきた多くの国との関係は一気に崩れていき、国際的な孤立が進むだろう。
つまり、ロシア支持の道も中国にとっては得るものがあまりないのである。簡単に言えば、中国は今、袋小路に入り込んでしまい身動きが取れない。だからあいまいな態度を続けながら、ウクライナ情勢だけでなく米中関係をみているのだろう。
とはいえ、いずれ何らかの決断を下す日が来るだろう。もちろんロシアを切り捨てることはできない。同時にアメリカが容認できる道としたい。それが中国にとってはベストだろうが、そんな都合のいい方策があるのか。
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