「ウクライナ戦争」が起こる知られざる深い事情 国際政治記者がストーリーでわかりやすく解説

拡大
縮小
ロシアも中国もとても大きな国なのに、領土にこだわる理由はなぜなのか(写真:butenkow/PIXTA)
ロシアによるウクライナへの侵攻は世界を揺るがし、ガソリンや食べ物の価格を通じて日本にも大きな影響をもたらしている。ウクライナのクリミア半島のロシアによる併合も現地で取材してきた元モスクワ特派員の田中孝幸氏が上梓した『13歳からの地政学』は、高校生の大樹と中学生の杏の兄妹と、年齢不詳の古物商「カイゾク」との会話で地政学について学べる1冊だ。今回は、ウクライナの戦争のような事態がなぜ起こるのか、本書から一部抜粋・のうえ再編集して紹介する。

なぜ領土を求め続けるのか

大樹:素朴な疑問なのですが、ロシアも中国もとても大きな国なのに、なぜそんなところの領土にこだわるのでしょうか? 国同士の境目は、管理ができないくらい寒くて、人もいないんですよね? なぜそんな土地を取り合うのでしょうか?

『13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

カイゾク:ふむ、ちょっとくらいの領土なんて、こだわらなくてもいいんじゃないかということだな。しかし、実際にはそういう考えにはならない。国が大きければその分、さらに大きくしたいと思うものだ

そこでカイゾクは、1本足の地球儀を少しずらして、デスクの真ん中に白い紙を1枚置いた。そしてそこに赤のサインペンで小さな丸を描いてから、2人に聞いた。

カイゾク:仮にこの赤い丸を自分の領土としよう。周りはほかの国に囲まれている。そして自分の領土を守るために、周りの国も攻め取って自分のものにする

カイゾクは赤い丸の外側に、大きな赤い丸を描いた。

カイゾク:こうすれば、中の丸い部分は安全になる。でも、新たに取った部分は外に面しているからまだ安全ではない。せっかく大変な苦労をして、自分の国のたくさんの兵士の命を犠牲にして攻め取った部分だろうから、なんとしても取られたくないと思うのは自然だ。さあ、どうすればいいだろうか?

大樹:やっぱりさらに外側の国も自分のものにしなければいけない、と思うのでしょうか?

次ページ「北方領土」も同じ?
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT