「ウクライナ戦争」が起こる知られざる深い事情 国際政治記者がストーリーでわかりやすく解説

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:内部の問題?

カイゾク:そうだ。それは大陸にある陸続きの大きな国の、共通の問題でもある

国民の「反戦」声が届かない理由

:でも私たち普通の人が、侵攻をやめて、とか思っていてもどうしようもないのかな? 国には逆らえないから

大樹:いや、選挙がありますよね? そういう国民の声を合法的に政府に届けるには、選挙でそういうことをしない政治家を選べばいいんじゃないでしょうか

カイゾク:大樹くん、その通りだよ。だが中国のリーダーを選ぶ方法は、日本の選挙とは違う。基本的に、国民が投票でリーダーを選んでいないんだよ

:えっ、そうなの? 日本はよくやってるよね、選挙。良さそうだなと思う人に投票して、その人がやっぱりあんまり良くなかったら、次の選挙の時は投票しなければいいんでしょ?

カイゾク:ああ、日本はそうだな。杏さんが言った、国民が選挙で代表者を選ぶ仕組みが、民主主義というものだ。自分が選んだ政府であれば、納得感があるだろう。では民主主義でない国では、そのリーダーに納得できない場合、国民はどうするだろうか?

大樹:えっと、たしかフランス革命では、王様を殺して、民主主義になったんですよね

カイゾク:そう。王様も王妃もその取り巻きの貴族たちもギロチンで殺された。つまり、リーダーを暴力で物理的に消したということだ。選挙がある国では、負けるということは権力を失うということだけだが、選挙のない国では、負けるのは往々にして死を意味する。民主主義の利点は、暴動やギロチンがなくてもリーダーを代えられるということにつきる

大樹:じゃあ、中国はその仕組みがないので、下手をすると国民に殺されると、えらい人たちは思っているのでしょうか?

カイゾク:それは間違いない。だから生き延びるために必死だ

:じゃあその民主主義にすればいいじゃない、中国もさ

カイゾク:しかし、実は世界には民主主義をちゃんとできている国というのは、そんなに多くない。そして必ずしも民主主義でなくても、国民を納得させることはできる。大樹くん、毛沢東はどうやって選ばれたリーダーだい?

大樹:今の中国を作った人だよ。どうやって選ばれたかは、えっと、建国の父だから、初めからリーダーというか

カイゾク:ふむ、毛沢東は、戦争を勝ち抜いて国を立ち上げたリーダーだ。その圧倒的な実績で、トップであることを国民に納得させたんだな

:ふぅん、その人の後は?

大樹:鄧小平ですよね?

カイゾク:そうだ。鄧小平は政治家だが、戦争で大きな功績をあげた軍人でもあった。そして鄧小平はその後のトップに江沢民、胡錦濤の2人を指名した。この2人はこれも戦争の実績のあった鄧小平から選ばれたということで、国民を納得させてきた。それに、鄧小平から後の時代に国はどんどん豊かになっていった

:カリスマってやつだね

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