相手の気持ちを察し、自分本位を慎む--『誰も教えてくれない男の礼儀作法』を書いた小笠原敬承斎氏(笠原流礼法宗家)に聞く

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 作法は時代に即し、変わっていく。ただ、なぜそうするべきかという心は、現代においても室町時代の伝書と通底して変わることがない。この本を書いてあらためてそれを実感している。

──今ではなぜそうするのか、理由がわからないことも少なくありません。男性は白い着物を着るのがいいとあります。

身だしなみの項目として伝書の中にある。当時も美しい色や柄の着物はあったが、中でも白がいいという。これは、心に自信があれば、自身から十分に美しさが出てくるので、ほかのものに頼らなくても輝くことができるという考えの表れとされている。

現代においてもおしゃれをしたり身だしなみを整えたりするのはすてきなことだが、それには限りがあって、そんなにおカネをかけて身だしなみを整えなくとも光る人はいる。本当に知識が豊かな人、仕事のできる人は、自分でそれを言わなくてもおのずと感じられてくるものだし、むしろ言わないことによって、そのよさが引き立ってくる。

──言わないことによって……。

「前きらめきを慎む」といって、自分の能力や個性を人前で得意げに見せない。自分を目立たせることは、周りとの協調性も崩してしまうし、あってはいけない。自分に誇りがあれば後ろ指を差されない。自分は真っすぐに生きていきたいという自信があれば、心にゆとりは生まれてくる。

現代は自分だけで精いっぱいという人が多い。特に若い世代だと、誰ともコミュニケーションを取らなくても生きていけると考えがちだ。しかし、自分をさらに磨いて、幸せな気持で人生を送るには、多くの人といいコミュニケーションを取っていくことが大事。室町期の武士の時代に戻って、その作法のエッセンスを活用するのはいかがか。そのキーワードは昔も今も共通している。

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