岸田首相にも打撃!河井事件「34人一転起訴」の謎 安倍氏、菅氏へ検察が牽制とのうがった見方も

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公職選挙法違反罪で実刑が確定している河井克行元法相(写真:AP/アフロ)

河井克行元法相と妻の案里元参院議員による大規模選挙買収事件で、検察当局がいったんは不起訴とした広島県議ら34人を、一転して起訴したことが地元広島以外にも政治的波紋を広げている。政権も揺るがした重大事件での検察の不可解な対応に、不信や疑問が相次いでいるからだ。

東京地検の森本宏・次席検事は、起訴時の記者会見で「検察審査会の議決を分析し再捜査した結果、議決は理解できるものだった」などと説明。検察当局が自らの捜査結果より、検審の議決を優先したことを暗に認めた。

ただ、34人それぞれに対する在宅起訴と略式起訴の振り分けも含め、「線引きは極めて不透明」(司法関係者)だ。検察に振り回された格好の自民広島県連幹部は「本物の巨悪とされる人物は無罪放免で、今回の検察の対応はあまりにも恣意的。司法取引のような捜査で証言させておいて、検察審査会を利用して起訴に持ち込んだのはある種のだまし討ち」(同)と検察への怒りを隠さない

森本氏は「一般的な買収事件に比べて、特殊な要素があったことなど総合的に判断した」と河井夫妻事件の特殊性を強調。「本件が公職選挙法の処理をするうえでの基準を示すような事案とは考えていない」と説明したが、「その説明自体が、今回の検察対応の奇妙さを浮き彫りにした」(司法関係者)との見方が少なくない。

起訴相当35人のうち34人を起訴

東京地検特捜部は3月14日、2019年参院選での広島選挙区で、河井夫妻らから多額な現金を受け取ったとされる100人のうち、34人の地方議員らについて、公職選挙法違反罪(被買収)で起訴した、と発表した。

この買収事件については、市民団体からの申し立てを受けた東京第6検察審査会が、審査対象となった100人のうち、10万円以上を受け取り辞職や現金の返還などをしていない地元地方議員ら35人を起訴相当と議決したことを、1月28日に公表していた。

その際、検察審査会は100人のうち46人は「不起訴不当」、19人は「不起訴相当」と議決。これに対し、検察側は再捜査で、ほぼこの議決に沿う形で、当初の不起訴処分を一転させ、起訴相当とされた35人のうちの体調不良の1人を除いて、起訴した。これにより、自民党を揺るがした河井夫妻による巨額選挙買収事件の捜査は、事実上終結した。

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