岸田首相にも打撃!河井事件「34人一転起訴」の謎 安倍氏、菅氏へ検察が牽制とのうがった見方も

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具体的手続きとしては、東京地検から事件移送を受けた広島地検が起訴した34人のうち、略式起訴で簡易裁判所による略式命令(罰金)が確定した現職議員は、公民権が原則5年間停止されて失職する。

それに伴い、複数の選挙区で補欠選挙が実施される。並行して、広島地検が容疑否認の議員ら9人について正式起訴したため、広島地裁で刑事裁判も行われる。こうした状況が広島の地方政治を混乱の渦に巻き込んでいる。

広島地検は、公選法を踏まえた一番早い公訴時効が3月下旬に迫っていたため、検審の議決公表直後から当該県議らに対する再捜査に着手。ただ、再捜査に対して当初の供述を変える議員が相次いだことで捜査は混乱したとされる。

「起訴相当」の5市議が検察捜査手法を批判

そうした中、検審が「起訴相当」と議決した広島市議5人は3月2日、弁護士とともに市内で記者会見。5人全員が「買収の意図は感じなかった」と公選法違反の認識を否定したうえで、東京地検特捜部による捜査手法を強く批判した。

5人が公表した「共通コメント」では、「国会議員からはお中元やお歳暮のような形で現金を渡されることはこれまでも多くあった」と指摘。現金授受についても「普通のことで、罪悪感はなかった」と強調した。

さらに、「捜査の目的は河井克行氏を処罰するのが捜査の目的。先生には何もするつもりはない」などと検察官が司法取引をちらつかせたと主張。「連日長時間の聴取に、(選挙と)無関係と断言できず、調書に署名してしまった」などと釈明し、同席した弁護士も「無理な自白強要があった」と指摘した。

もともと河井事件の捜査では、検察内部からも当初の一律不起訴処分への異論や疑問が少なくなかった。「通常、15万円以上の現金受領は公判請求する。最初からきちんと仕分けして起訴しておけば、検察の裏取引が疑われる事態にはならなかったはず」との判断からだ。

こうした中、広島市議会は3月17日、現金受け取りで在宅起訴された市議6人に対する辞職勧告決議を賛成多数で可決。広島県安芸太田町議会も在宅起訴された町議の辞職勧告決議を全会一致で可決した。ただ、各市議らはいずれも「絶対買収に手を染めていない」と徹底抗戦の構えで、広島政界の混乱は収まる気配がない。

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