岸田首相にも打撃!河井事件「34人一転起訴」の謎 安倍氏、菅氏へ検察が牽制とのうがった見方も

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そもそも、河井夫妻の巨額選挙買収事件は、2019年参院選で自民党本部が地元県連の反対を押し切って、定数2の広島選挙区に、2人目の候補として案里氏を公認したことが発端。選挙戦は自民公認候補同士の激しい票の食い合いとなり、当初6期目の当選が確実視されていた党重鎮の現職が落選したことで、自民党内の派閥がらみの内紛が表面化した。

しかも、選挙後に党本部から河井陣営に1億5000万円という、「常識の10倍」(自民選対)の巨額な選挙資金が振り込まれていたことが発覚。参院選から3カ月あまりの2019年10月末、法相だった河井克行氏が、週刊誌の公選法違反疑惑の報道を受けて突然辞任し、検察の本格捜査が始まった。

その時点での検察捜査は、党本部が振り込んだ政党助成金も含めた1億5000万円が、河井夫妻の買収の原資となったかどうかが、最大の注目点だった。しかし、現地に乗りこんだ東京地検はその点に踏み込まないまま、2020年7月に河井氏を100人に計約2871万円を配った加重買収などの罪で、案里氏も県議4人に計160万円を渡した買収罪で起訴した。

その後、河井夫妻は法廷闘争を続けたが、いずれも2021年に有罪判決が確定したことで、政治的には決着はついた格好となっていた。

安倍氏、菅氏を政治的に牽制?

河井夫妻が起訴された際、当時の安倍晋三首相は国会答弁などで「(河井夫妻は)説明責任を果たさなければならない」などと繰り返したが、夫妻は雲隠れを続けた。その一方で、自民党本部は1億5000万円について「買収資金の原資ではない」と否定を繰り返した。

これに関連して、広島が地元の岸田首相は、昨年9月の総裁選前には「買収に使われていないことを、厳正に精査して国民に説明する必要がある」などと語っていた。しかし、総裁選勝利の後は、党本部で監査が終わっていることなどを理由に再調査に否定的な考えを表明。党内外で「安倍氏らに忖度した」などと風評も広がっていた。

そうした経緯も踏まえ、東京地検が今回、過去の捜査結果をあえて覆して起訴に踏み切ったことについては「何らかの政治的意図がある」との憶測も広がる。「案里氏擁立と1億5000万円振込を主導したとされる安倍氏や菅義偉前首相を、政治的に牽制する思惑があるのでは」(閣僚経験者)とのうがった見方だ。

ただ、岸田首相にとって「起訴によって地元広島の自民党組織がズタズタになることのダメージが大きい」(自民幹部)のは事実。ここにきて自民党京都府連の国政選挙に絡んだ「マネーロンダリング疑惑」も政治問題化しており、首相周辺は「東京地検の奇々怪々な対応が、参院選に悪影響を及ぼしかねない」と顔をしかめるばかりだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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