東京駅「新バスターミナル」で激変する乗り場事情 運営は乗り入れ路線ない「京王」新たな収益源に

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京王電鉄バスやグループの京王バスは、東京駅周辺発着の路線は運行していない。その中でターミナル運営に名乗りを上げたのは、コロナ禍でバス事業が苦しい状況の中、新たな収益源を確保したいとの狙いがある。

東京駅八重洲南口を発車した高速バス(記者撮影)

同社東京駅八重洲高速・貸切バスターミナル開業準備チームの福島八束部長は「(京王は)1971年から新宿西口バスターミナルを運営し、バスタ新宿でも運営の一部に携わっている。このノウハウを生かす道はないかと考えた時に今回の話があり、事業参入していきたいと考えた」と説明する。

ターミナルは八重洲口周辺発着の路線を集約する以外に、キャパシティに余裕がある場合は新規路線の乗り入れも認める方針だが、京王グループのバス乗り入れについては「車庫からの距離などを考えると、今すぐこのターミナルに新たな高速バス路線を乗り入れることはない」(福島部長)といい、参入目的はあくまでターミナル運営自体だ。ただ、「運営に携わる以上、空きバースがあれば検討していきたいとは考えている」という。

「完全に集約」ではない

今年9月の第1期開業後、第2期エリアは2025年度、第3期エリアは2028年度の開業を予定している。新ターミナルへ乗り場を移行する優先順位はまず外堀通り・八重洲通りの路上発着便、次いで鍛冶橋駐車場発着便だ。同駐車場のバスについても「第1期で全ての移行は難しいが、第2期ではほとんど移行するのではないか」(UR・大貫部長)という。

コロナ禍前の2019年10月の調査によると、路上や鍛冶橋駐車場、さらに丸の内側の路上も含めた高速バスなどの発着便数は平日で1261便。新ターミナルは全面開業すれば1日1500便以上の発着が可能なため、東京駅周辺の高速バス乗り場はほぼ集約できそうだ。

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ただ、東京駅周辺のバス乗り場が完全に1つになるわけではない。東京駅八重洲口には南口のJR高速バスターミナル、北口には「鉄鋼ビル」の高速・リムジンバス乗り場と、すでにバスターミナルが存在するため、新ターミナルと混同しない旅客案内などが重要になる。URの大貫部長は「利用者が混乱しないよう、バスのサインやチケットへの表記をどうするかはすでに議論している。運営主体は違うが、混乱をきたさないように連携したい」と話す。

関東地方の近距離便から全国各地への夜行便まで多数の路線が発着するものの、乗り場のわかりにくさや待合スペースの貧弱さが課題だった東京駅周辺の高速バス乗り場。コロナ禍による利用者の減少で高速バスが苦境にある中、利便性向上につながる新ターミナルの開業が明るい話題の1つであることは間違いない。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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