東京製鉄の異色経営、価格とエコを武器に挑戦状

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 一方で、高炉5社が独占してきた自動車向けは長期増加基調にあり、薄板専用工場を造る東鉄の決断は合理性がある。実際に東鉄の挑戦は成果を上げ、高炉との競合品種は8割を超えた。新日鉄から首位の座を奪った主力のH形鋼も大きいが、何より伸びたのが板材。売り上げ構成比で厚板が15%、薄板は40%と、今や全体の55%を占めるまでに膨らんだ。新工場が本格稼働すれば、この比率はさらに高まるはずだ。

低品位の原料が武器に 愛知の戦略工場が始動

昨年11月に稼働した田原工場は、国内電炉としては初の薄板専用工場である。レクサスなどを生産するトヨタの工場は目と鼻の先だ。同社最大だった岡山工場の倍以上となる104万平方メートルの敷地を擁する。熱延鋼板は昨年11月から生産を始めており、9月にはJIS規格も取得。製鋼工場は6月から動いている。来年春には酸洗工場も稼働し、自動車向けの体制がさらに整う。

中部地方は産業の一大集積地。工場で出る高品位スクラップ「新断(しんだち)」の発生は国内最大だ。

現地のスクラップを集めたい──、田原工場には原料立地の意味もあった。「豊橋、衣浦、名古屋の3港だけで月間十数万トンのスクラップが輸出されている。原料調達の優位性も狙いの一つ」と西本社長も認める。ただ、田原では老廃くずも使う。

「新断の奪い合いになると予想していたが、老廃スクラップのH2を使うのであれば状況は変わる。量が多く安いH2は、鉄鉱石など高炉原料とのコスト差も大きい」(鉄リサイクリング・リサーチの林誠一代表)

「銅の混入率が高いと製造過程で割れが生じやすくなるが、鋳込む技術さえあれば、安い主原料を使え、高機能材が造れる。それをやろうとしているのが田原工場」と説明する板谷俊臣技術開発部部長代理。自動車技術会に参加し、各社材料技術部の技術者とも交流が深い。

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