石破氏に秋波も!菅氏が「勉強会」発足へ今動く訳 自民党の冷や飯組の"駆け込み寺"になる可能性

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昨秋の衆院選後、安倍氏は菅グループの「派閥化」を繰り返し提案してきた。岸田首相を支持する立場ながら、裏舞台でのあつれきもあるとされるのが安倍氏。それだけに、安倍政権の官房長官だった菅氏との協力関係再構築は、岸田政権への圧力となることは間違いない。

このように、菅氏の勉強会立ち上げは自民党内の権力闘争の構図を変える可能性があり、岸田政権の幹部も警戒心を隠さない。ただ、この段階での菅氏の動きには、党内の「困惑と不信感」(閣僚経験者)が拭えないのも事実だ。

公明党は「必ずしも菅氏を頼りにはしていない」

菅氏は公明党との太いパイプを維持しているとされるが、公明党は「必ずしも菅氏を頼りにはしていない」(幹部)とみられている。3月13日の自民党大会でも、岸田首相と山口那津男公明党代表がそろって、参院選勝利に向けての連携強化をアピールしてみせた。

参院選での自公選挙共闘については、昨年来あつれきが目立っていた。しかし、自民党大会の直前になって双方が関係修復に動き、足並みが乱れていた各選挙区での「相互推薦」でも合意する方向となった。これを「自公党首の菅氏の動きへの警戒心の表れ」(自民選対)と勘繰る向きもある。

そうした中、保守3分裂の選挙となって結果が注目された3月13日投開票の石川県知事選は、馳浩元文科相が大接戦の末に初当選した。馳氏は安倍派所属で、安倍氏や森喜朗元首相が支援する一方、日本維新の会が推薦したことが「勝利に結びついた」(自民選対)との指摘もある。

ただ、地元石川の維新幹部は猛反対したのに、維新の松井一郎代表と親密な安倍・菅両氏の働きかけで維新の馳氏推薦が実現したとされる。同知事選は安倍派の内部分裂で安倍氏の指導力も問われていただけに、安倍氏は安堵したものの「岸田首相はあまり関係のよくない維新に借りができた」(自民選対)との声も出る。

そうした中、通常国会前半の最優先課題だった2022年度予算は、18日にも成立する段取りだ。このため、岸田政権の当面最大の課題は、ウクライナ危機とコロナ対策への対応となる。まさに東西冷戦の再来とパンデミックという文字どおりの国難だけに、与党内には菅氏らの動きも含め「今はコップの中の争いなど論外」(自民長老)との声も広がる。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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