昨対23%増「フェラーリ」コロナ禍でも絶好調の訳 ラインナップと顧客ロイヤルティの巧みな戦略

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エグゾーストノートも、音量こそ下がったように感じたものの、「おっ」と思わせる、まがいもなきフェラーリ・サウンドがイタリア現地で披露された。

さらに過去のヘリテージを継承する、新世代のきわめてクリーンなスタイリングが採用されたことも、大きな反響の一因であろう。現在はこの296GTBのほかに「SF90ストラダーレ」、そしてグラントゥーリズモ的なテイストの「ローマ」などの人気モデルがラインナップにあるから、フェラーリの業績はここ数年安泰であろう。

2+2シーターのFRグラントゥーリズモ「ローマ」(写真:Ferrari)

2015年にFCA(現ステランティス)からスピンアウトし、ニューヨーク証券取引所に上々したフェラーリの株価も、市中での評価は高い。公開価格52ドルの株価は現在220ドルを超えており、電動化に関するトピックで株価が左右されがちな現在の自動車メーカーの株価とは、一味違った値動きをしている。

現在のフェラーリは、年間販売台数の記録更新をしたこと、順調に利益を伸ばし販売台数がバラツキなく上昇機運にあることから、株式市場においても高い評価を受けているのだ。とはいっても、フェラーリが電動化に背を向けているわけではない。

PHEVシステムと組み合わされる「296GTB」のV6エンジン(写真:Ferrari)

ラインナップのPHEV化のため、マラネッロのファクトリーにおいてはPHEVパワートレイン製造ラインが新たに設けられているし、BEVの開発に関しても明言されている。新たにCEOに任命されたベネデット・ビーニャは半導体のエキスパートであり、先日もクアルコム テクノロジーズとの戦略的技術提携を発表した。

これら電動化への取り組みも、上記のファクターに加えて株式市場で評価されていることは間違いない。フェラーリというメーカーは、かつて新技術の導入に関して非常に保守的であったが、今やそんな気配は微塵も感じさせなくなっている。

コロナ禍の逆風をもろともせず

コロナ禍において、当初はラグジュアリーカー市場の危機が語られたこともあったが、それは完全に杞憂であった。

富裕層は今まで以上に希少性をもったラグジュアリーカーを求めたのだ。そして、そういったラグジュアリーカーブランドの中でも、やはりフェラーリは突出して強かった。リセールバリューも安定しているから、フェラーリの正規ショールームは大賑わいであったし、中古車販売店の店頭からもフェラーリがどんどん消えていった。

「高年式のフェラーリを求めるお客様がとても増えました。相場ももちろん高騰です。しかし、私たちのビジネスとしては大変、難しいところです。というのも、品不足で中古車の仕入れができないのです」と、フェラーリに強い独立系中古車販売店のオーナーは語る。

富裕層がフェラーリをこぞって買いに走ったが、そこまで資産を持たない客層もそれなりに動いていたようだ。

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