「なんでも否定する人」を撃退するうまい対処法 面倒な人に対応するときに有効な伝え方とは?

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なんでも否定する人の理由で書いたように、否定するのは「自分の優位性」「負けたくないコンプレクス」「自己肯定」です。そこの部分を満たす返答をすることで、相手はもうNOとは言いにくくなるはずです。
なぜなら否定する理由がなくなるからです。

なんでも否定する人など、ちょっと面倒な人にどう対応したらいいかを考えるときに役立つのが「伝わる構造」です。「伝わるとはどういうことか」の構造を理解しておくと、さまざまな場面に応用ができ、たとえば面倒な人にどう対応するかを考えるときにも大きな武器になってくれるはずです。

否定は必ずしも悪いわけではない

一方で「否定」にはいい部分もあります。否定によってさまざまな課題を発見できます。私は編集の仕事をしていますが、意識的に「否定」を活用していて、これを「性悪視点」と呼んでいます。

たとえば新しい企画を考えるとき。意識的に「否定的な視点」「いじわるな視点」でその企画を多面的に見ていくようにしています。どうしても人は自分に甘くなりがちです。私自身も、新しい企画のアイデアを考えたときには「これはすごい企画だ!」と自画自賛してしまいます。

でもそのあとに意識的に「性悪視点」でその企画を見ていくと課題がどんどん湧き出てきます。その課題を解決しながら、企画を仕上げていくことで、より魅力的で強度のある企画が生まれます。

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以前、ある会社で「お店の悪口を募集」したことがニュースになったことがあります。これはかなり勇気のいる行為だと思いますが、「否定」を商品やサービスの改善に役立てようとする企業は多々あります。

もともと人間の脳はネガティブなものにフォーカスをあてやすくできています。

たとえば、「好きな食べ物はなんですか?」という質問をするとすぐに答えが出ない人でも、「嫌いな食べ物は何ですか?」と聞くとすぐに答えが出ることがあります。嫌いなもののほうが、より強くインプットされているからです。ポジティブ思考になるためには意識や練習が必要と言われるのもそのためです。

そう考えると「すぐ否定する人」がいることも理解できる部分もあります。だからといって面倒な人であることに変わりはありません。ぜひ対応策を身につけてください。

また一方で、自分が「すぐ否定する人」にならないように気をつけたいところです。「己の欲せざるところは人に施すことなかれ」これは孔子の言葉ですが、孔子が弟子から一生努力をしなければならない言葉を何かもらえないかと頼まれて、与えた言葉だそうです。

自分にしてほしくないことは他人にするな。「すぐ否定してしまう」ことは無意識に自分もやってしまうかもしれません。対応策も大切ですが、自分はそうしないということを意識することも必要なのかもしれません。

柿内 尚文 編集者

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かきうち たかふみ / Takafumi Kakiuchi

1968年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。読売広告社を経て出版業界に転職。現在、株式会社アスコム取締役。長年、雑誌と書籍の編集に携わり、これまで企画した本の累計発行部数は1000万部以上、10万部を超えるベストセラーは50冊以上に及ぶ。特に実用書のジャンルで数々のヒットを生み出している。現在は本の編集だけでなく、編集という手法を活用した企業のマーケティングや事業構築、商品開発のサポート、セミナーや講演など多岐にわたり活動。著書に『パン屋ではおにぎりを売れ』『バナナの魅力を100文字で伝えてください 誰でも身につく36の伝わる法則』(かんき出版)がある。

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